アパレル業界はコロナでもいまだにお洋服大好きの人たちの論理で進んでませんか?
百貨店業界にいた頃はいつもスーツを着て、シーズンごとに必ず新しいお洋服を買うのが当たり前であった。その時でも、サンフランシスコ,シリコンバレーにいく時はネクタイは誰もしていないからしない方が良いと言われ、ジーンズスタイルで行くようにしていた。
そして会社を辞めて、昨年からシンガポールに行くと、もはや現地ではほとんど誰もスーツを着ていなかった。着ているのは日本の企業の駐在員とかである。
今、お会いしているのはベンチャー企業などの人が多いが、誰もスーツは着ていないしどちらかというとあまりオシャレだと思う人には会った事がない。
特にIT業界の人はそうだ。ファッションに興味のない人が増えているのだ。
だんだんシリコンバレー化してきているのではないかと思ってしまう。
一方で食は状況が違う。シリコンバレーでもカジュアルな服を来て、有名なベジタリアン食メインの高級レストランが流行っている。一人5万円もする。
でも着てる服は安いジーンズにTシャツとジャケットだ。
乗ってる車もスーパーカーではなく、プリウスかテスラだ。価値観、ライフスタイルが違うなあと思っていたが、これって日本にもだんだんと出てきているのではと思う。
これは人のファッションに対する定義や価値観が変わってきた事に由来するのだろう。
これまではファッション=流行=お洋服、時計、アクセサリー、車という方程式ができていた。だからお金持ちになったら高級ブランドのお洋服や時計を身につけてみたいと誰もが思ったのだ。
その名残がまだ百貨店では高級時計の売れ行きでは見られる。ロレックスの時計はまだ売れているが、本当にこれからも続くのだろうか?
シリコンバレーでもシンガポールでもそうだが、若い世代の成功者と言われている人でお洋服、時計など身に付ける物で着飾っている人にはほとんど会ったことがない。一方でほとんどの人が健康的な生活に心掛けている。だからジム、瞑想、ヨガなどに興味があるし、自然食、野菜、美味しい食事にはとても興味がある。
彼らにとってのファッションの定義はオシャレなお洋服、雑貨を身に付けることではなく、健康的な生活を送り、美味しいものを仲間と食べるという風に変わってきているように感じる。
もうオシャレなお洋服をカッコよく着こなすというフレーズは若い世代の成功者にはなくなってしまったのではないだろうか。
ワールドの黒字決算の記事を読むと、三陽商会やオンワード樫山に比べてキャッシュコンバージョン率、商品を作ってから現金化する時間がとても早く、それが今回の黒字決算につながっており、企業変革が進んでいると評価している。今後の課題は自社ECサイトをどう成長させていけるかだとされていた。
それで私もワールドのサイトを見てみたが、あまりパッとしない。というか確かに今は最終処分セールで60−70%OFFという価格的な魅力はあるものの、買いたいという風には思えなかった。ZOZOとどう違うのというのが正直な感想だ。
早期の現金化の話も所詮は手練手管の話にすぎない。そもそものビジネスのターゲットである消費者の行動変化についていけているかどうかの議論がない。
どんどん、ファッションの定義からお洋服の占める部分が減ってきているのに、いまだにどうすればファッション=お洋服を売ることができるかということを考えているように思えてならない。
つまり、売る側の人の論理でビジネスを考えているとしか思えない。アパレル業界にいる人はお洋服が基本、好きな人ばかりだ。彼らの常識はファッション=お洋服なのだ。でもコロナによって、ファッションの定義がさらに加速して変化しているように思えてならない。
キャンプ人気がコロナでさらに加速している。ではキャンプにおいてお洋服は重要な部分だろうか?おそらく、お洋服よりも、キャンプ道具、キッチン道具の方が重要だ。これが今の生活、にユーノーマルではないだろうか。
つまり、アパレルに対するマスマーケットの需要はどんどん下がっていくだろう。そこで減った需要がキャンプ用品や、IT機器、そして健康器具、食事などに変化していく。ではアパレル企業はどうすれば良いのか。
私はお洋服が大好きな人に洋服を作らせていてはいけないのではないかと。IT企業などで働く、アパレルブランドに興味のない人の声を集めて、そこから新しいブランドを立ち上げていく。それはお洋服メインではないだろう。でもIT企業に務める人ならではニーズ、ウオンツが詰まったブランドであればきっとうまくいくのではないかと。
まずアパレル企業は自社のメインアイテムをお洋服であるという旧ノーマルから、新しいライフスタイルグッズというニューノーマルに書き換えることが大切だ。
これには企業文化の変革を伴うが、それ無くしてはアパレル企業の生き残りは難しいだろう。
ライフスタイルマーチャンダイジングという言葉を30年以上前に教えてもらったが、今のライフスタイルマーチャンダイジングの定義は大きく変わってきたように思う。そこにうまく乗れるかどうかが企業の生死を分けるのだ。