デジタル化によりさらに高まる人間性の魅力
本書の第8章「ブランドの誘引力を高める人間中心のマーケティング」では、世の中がデジタル化し、多くのことを人間ではなく、機械がこなすようになればなるほど、人間はより人間らしいものを求めるようになると説いている。
これは全てが合理的、効率的に処理されてくるようになると、人間はどこかでゆとり、安らぎなどの感情的なものを求めるのである。
東大卒のエリートでなんでも出来るけれど、常に理屈ばかりで面白みのない人が組織のリーダーにはなり得ないだろう。
どこかに人間らしい魅力があることが、これからのデジタル社会ではさらに重要になる。
本書では他者を引きつける6つの人間的特性として、6つあげている。
身体的魅力、知性、社交性、感情性、パーソナビリティ、道徳性だ。
身体的魅力は企業で言えば、カッコよさである。製品、サービスのでざいん、品質、性能がクールかどうかである。
知性はその企業に新しい知識、アイデアを生み出す力があるかどうかである。
社交性は常に顧客と恐れずに対話できる覚悟があるかどうかである。トップ自らが恐れずに顧客と向き合う姿勢とも言える。
感情性は顧客の心に訴えて、それを他者に伝えたいと思わせるような企業、ブランドであるかどうかだ。これは企業にそのようなパッションがあるかどうかだ。
パーソナビリティは企業が自分の強み、弱みをしっかりと把握し、それを高めるための努力を続け、それを顧客にも明らかにしているかどうかである。人間力の強さは弱みを相手に見せることも大切なのである。
道徳性とは倫理的で、強い誠実さを備えていることをいう。まさしくコーポレートガバナンスである。企業として誠実に社会の一員として行動しているかどうかである。
このような人間的魅力を全て兼ね備えている人物をあげるとしたら、すぐに目に浮かぶだろうか?
でも企業なら意外に簡単と浮かぶのではと。
テスラ、アップル、グーグル、ヴァージンなどではないだろうか。結局は創業者とダブルかもしれないが。
残念ながら、日本の小売業で名前は浮かんでこない。
おそらく、ブランド、企業に人間性を持つためにはこれまでとは違うアプローチが必要なのではないかと。
つまりそれはヒエラルキーを基本にした企業組織の解体ではないかと。
自分もMBAの教育を受けた端くれとしては、経営のプロが多くの企業の中には少ないと感じる。MBAでも最終的には人間力だと私は感じた。頭の良い人だけならいくらでもいる。でもそれだけでは、経営はできない。
自分の経験でもマネジメントには王道はない。山登りのようなものでいくつもの道、手段がある。しかし、どのルートを取るにしても、チームは同じである。そのチームをどう作り、どう結束して困難に向かっていくのかは同じである。
一人で上記に述べた魅力を全て持たなくても、チームでそれが補完できれば問題ない。そのチームづくりこそが経営の肝のような気がしてならない。
日本の大企業はワンマン経営ができる創業者がいない会社がほとんどだ。だとすればチーム経営ができなければ会社は滅びる。
今こそ、苦難に立っている企業はチーム経営をすべきだし、そのための改革が必要だ。どうしても自分が社長になるとワンマン経営したくなるのだろう。そしてチームではなく、部下経営になってしまうのだ。
部下経営というのは、結局全員を自分よりも能力が低いと考えてしまうことだ。そして人は信用することができるかどうかではないだろうか。企業の中で信頼関係を作ることは本当に難しい。でもそれがなければ良いものはできない。
これは私の経験からも言える。そのための努力を企業人、特に上に立つ者はしっかりと認識するべきだろう。