アメリカのショッピングモールの復活ぶりは誰も予想できなかった
最近よくチェックしているHPにThe RobbinReportがある。これはアメリカの小売業界全体についてレポートしているが、今回面白かったのはショッピングセンターの復活である。
2020年のコロナ禍で専門家はほとんどのショッピングセンターが潰れるだろうと予測していた。しかし、実際には予測とは違い、閉店したお店は少なく復活を遂げている。
もともとコロナ前から、ざっとでいうと、3000強のショッピングセンターのうち1000店舗はC,Dランクと評価されていて、その運命は閉店しかないと思われていた。そこにコロナ禍で一時休業を余儀なくされてもう運命は尽きたと誰もが思った。そしてそれ以外のBランクの店舗も早晩閉店するだろうと思われた。コロナ禍でのオンライン通販の台頭がその予測を後押しした。
しかし、結果的にはそこまでの閉店にはならず、規制が解除になると再び、店舗に人が集まったのである。2019年よりも売り上げがプラスになったショッピングセンターも出てきている。
この記事にもあるように、元々ショッピングセンターのキーテナントであるデパートの集客力は落ちており、アンカーテナントがいない中でショッピングセンターが回復できるのかという声は大きかった。またネット通販の利便性が広まり、もうリアル店舗にいく必要がないのではないかという声もでた。
しかし、多くの人々はまだまだリアル店舗が好きなのだ。ネット通販では買い物によるストレス発散は十分ではないのだろう。やはり、ウインドウショッピングをして、ぶらついて、ご飯や食べ物を飲み、そして買い物を楽しむという一連の行動があってこそのショッピング体験を顧客は求めているのだろう。
今、ワークフロムホームの徹底が議論されている。確かに自宅からの仕事をすることには多くの利点がある。しかし、一方で欠点も多くあることが分かってきたのだ。今、コロナが治れば再び出勤したいという人が半数以上もいる。
私は、人間がどのようにストレスを発散するかという観点からこの問題を考えるとわかりやすいと考える。
つまり、仕事をすると必ずストレスが起こる。それを発散する時に1人で家にいるとこれを発散するのは困難だ。一時期、ネット宴会が流行ったが、今はほとんどがしていない。なぜか。オンライン飲み会だとストレス発散できないからだ。これは私も経験者として実感する。
会社にいれば誰かに少し愚痴ることでストレス発散になったりする。またくだらないうさわ話がストレス発散にもなる。こういうことはオンラインではあり得ない。
ネット上で自分の持つストレスを発散できるのはZ世代より若いデジタル世代に限られるのではないだろうか。彼らのように常にリアルとネットをリンクさせているとストレス発散の方法はネットだけでもできるかもしれない。しかし彼らでもやはり実際に集まって飲みたい、おしゃべりしたいと思っている。だから路上飲みしているのでは。
主目的は違ってもストレス発散に必要な場が、レストランであり、喫茶店であり、そしてショッピングセンターなのだ。
モノを買う、ご飯を食べる、お茶を飲むという行為が主目的ではなく、ストレス発散がメインで集まりたいという人が普通なのではないだろうか。
買い物の場という視点から、小売店舗を見ると確かにネット通販に負ける。しかし、ストレス発散の場という観点から、小売店舗を見れば、ネット通販に圧倒的に勝てるのだ。
今の世の中はストレスでいっぱいだ。そしてそれを解決するために消費がある。エッセンシャルな買い物でもストレス発散できる可能性はある。同じお金を使うなら、同時にストレス発散もできると嬉しいに違いない。
ショッピングセンター、百貨店はこれまでお客様に夢を提供する場とも言われてきた。これからはディズニーランドと同じく、夢を見て、現実を忘れ、ストレスを発散するというプロセスを強く意識することが求められる。