AMAZONは小売業なのかTECH企業なのか?

自らの強みをどこに持つかと環境にどう対応するかが企業の成長を決める!

今回のROBIN REPORTではAmazonがリアル店舗事業のテストに苦戦していることを取り上げている。多くのリアル店舗での挑戦が失敗しているにもかかわらず、今年秋にはアマゾンファッションという3万フィートのお店をオープンさせることも懐疑的に捉えている。

この中で私が気になったのはジェフベゾスがホールフーズは買収したのに、ファッションでは自らが作り上げる選択をとっていることだ。

筆者もベゾスが「買うか作るかの決断」と述べているように、アマゾンの戦略の中で新事業を1から創り上げるよりも、既存の事業を買って早く、大きくするのが近道のように感じる。
このレポートではアマゾンは技術に強い会社なのだと述べており、本当に小売業に必要なものは理解できていないと。

筆者はいう「テクノロジーは道具に過ぎない。小売業の科学的な部分であり、信じられないような方法で反復されます。しかし、その反復は、人の心によって動かされる小売業の芸術を支えるものに過ぎないのです。」と。

消費者が買い物をする全体のカスタマージャーニーの中で、確かにキャッシュレスも便利だし、試着室でデジタルで着替えができたり、試着品を販売員がスムースに提案してくれるのは嬉しいだろう。
でもそれが優先順位のトップには来ないだろう。

大事なのは商品を選ぶまでの流れと、探し始めてからの発見があったり、そして実際に試着や試してみて違うことに気がつく。そしてプロのアドバイスや家族、友人からのアドバイスで思いも寄らない商品が欲しかったことに気づくという物語を体験することが楽しいのだ。

特にファッションの世界は店舗のブランドバリューがまだまだ影響するだろう。
アマゾンといえば、安かろう悪かろうというイメージがまだまだある。
だからこそ、ホールフーズは良い買い物をしたように私には感じられた。

ファッションは殊更だ。
おそらく百貨店を買収するというスキームは多くのM&A、投資銀行が画策しているに違いない。早晩実現するように思われるのだが、アマゾンのコアコンピタンスはやはり技術なのだろうと思う。

他の小売業のブランドをうまく利用しながら、強みである技術を多くの古い体質の小売業に注入することにより再生させていくのが正しい道のように思える。

しかし、アマゾンがこれほどいろんなチャレンジをするのは、新規事業を社内でやることの大切さから来ているのかも知れない。アマゾンのような収益力のある会社なら全く影響しないレベルだからだ。

だとすると、そもそも収益力の弱い会社はどうすればいいのか?

百発百中の新規事業なんてものはあり得ない。千3つと言われるほど、新規事業の成功確率は低い。だからこそ、収益力の弱い企業はこれからの時代は環境の変化に合わせたダイナミックな変革をするしかないだろう。小さな予算でビビりながら新規事業をやっているのでは企業文化も変わらない。旧来型の小売業には本当に厳しい時代だと感じる。

なぜ私が介護の資格を取ろうとしているのか

自分の事として老後を考えたら、全く世界が違っていた

今月下旬から、介護の最初の資格である初任者研修というものを学びにいく事に決めた。
まあとはいえ16回のコースを受講するだけだ。しかし朝10時から17時までみっちりと授業と講習があるようだ。
ここでは介護における老いとは何かから始まり、実際にどう介護をすればいいのかの技術も学べるとのことだ。

今、まだコロナ禍でもあり、またプライベートでも時間が取られるため、なかなか本格的な次の仕事を見出せてはいないのが現状だ。

しかし、この多少自由な時間が取れる今こそ、何か学ぶべきことはないかと思っている中で、介護の資格に出会った。

というのも、私の母は今年老人介護施設に入居する予定であり、そのため色々と施設探しやそのために必要な事項をこなしている。まだコロナ禍のため施設も決定していないが、私はすでに5、6箇所の見学を済ませた。
わずかな見学だが、その一つ一つが全て違っていた。私の義母は2年前からグループホームで暮らしている。そのため、介護の世界は少しは理解していたつもりだが、奥が深いというか、1人1人の人生にはそれぞれの歴史があるように、介護施設にも一つづつ個性がある。

簡単には特別養護老人ホーム、サービス付き高齢者住宅、介護付き老人ホームと別れるが、今回私が見学した、サービス付き高齢者住宅、介護付き老人ホームでもバラバラであった。

入居時に一時金として支払う必要のある施設は比較的サービスレベルが高いというか、グレードの高い施設だ。それも数百万から億まで色々とある。またサービス内容でもそれぞれに違いがある。

今回気がついたのは、このコロナ禍における入居者への外出、面談対応であった。

あるホームでは一切、面会はできないとしていた。しかし私が見学した時には部屋まで見学ができた。入居者と直接話すことはなかったが、何か違和感を覚えた。

施設でも過去に入居者、もしくは家族から事故により訴えられたとかがあったようで、極端に訴えられないために、過度の面会規制をしているところもあった。

つまり現場は本当に色々であり、介護の世界は本当に大変だということを感じた。

今回、私が驚いたのはある高級老人施設で65歳の入居できる前から多くの50代が見学に来ていると聞かされたことだ。確かにここは入居すると死ぬまで面倒を見てくれる。最初は自立型の部屋で生活し、その後介護専用の部屋に移り、最後は病院かその施設で看取りをしてくれる。葬儀会場まで施設内にあるのは驚いた。

まるで一つのコミュニティに入る感じだ。確かに最後を心配する必要もなく、安心感はあるだろうと思った。私も1人になったらここに入ろうかと思った。

母の施設探しをするうちに、自分より若い50代がすでに老後の身の振り方を考えているのを聞き、自分はどうするのかを考えるようになった。

介護の仕事をするために、資格の学校に通うのではなく、これからの社会を考えるにおいて介護の世界は大きな存在になることは間違いない。私は今、その世界を少し家族の立場で見ることが出来た。

では介護をする人からはどう見えるのであろうと思ったのが今回、通うことを決めた理由だ。

週に1回だが、自由に通える時間をもてる今だからこそ、この勉強をしてみたいと。

ただ、かかりつけ医の先生に私が介護の資格を取りに行くと話したら、「藤野さんにはもっと別の仕事が向いています」と言われたのが気になるが、まあ、しょうがない、頑張るしかない!

なんとなく小売り再編の予兆がする

7&IHDが西武そごうを売却するニュースと同じようにAmazonがKohlsを買収するかもというニュースはタイムリーだが、それだけでいいのか??

今日のRobin ReportではAmazonとコールズの相性の良さが報じられていた。

アマゾンはコールズの求婚者となるのか?

今朝の日経の一面はそごう西武の切り売りが大々的に取り上げられ、朝から7&Iの株価はストップ高、一方で百貨店株は軒並み売られるというなんとも、百貨店にはもう将来がないとばかりの動きが見えた。まあ普通の反応だなと感じた。

そして今朝ロビンレポートを見たら、アマゾンはホールフーズではなく、コールズを手に入れることで、一気に1160店舗を手に入れてシームレスな販売環境を整えることができると述べている。これも納得。

ただ、気になることがレポートに一つ書いてあった。Amazonは技術の塊の会社であり、そこには芸術がないと。彼らには人間的な要素が欠けているとも書かれている。これはこれからのZ世代を考えると致命的ではないのかなとふと、昨日書いたZ世代の記事を思い出してしまった。

また7&Iの育ての親である鈴木さんも芸術の香りがしない人であった。
だから、百貨店のような芸術や人間性を大切にする企業風土はセブンには合わないと誰も思っただろう。

そう言いながら、果たして今の百貨店にそのような風土はまだ残っているのだろうかとふと疑問が浮かぶが・・・・


インターネットというテクノロジーを中心に大きく小売り環境が変わる中で、技術先行で伸びていく会社もあれば、それだけではなく、一部の顧客を対象にしてネットとリアルで今以上におもてなしに溢れた小売り業態が生まれてくる可能性はあるのではないだろうか?

例えば地域に根ざした工芸品、特産品、海産物、農産物を単にプラットフォームで売るのではなく、一緒になって育てるとか、作るところから参画するといったより生産者と消費者が一体となったビジネスが生まれてくるべきではないかと。

なんとなく、今の若者の起業は結局プラットフォームビジネスだけになってきているような気がしてならない。もっと現場い足を運ぶ、いや地方に住みながら生産者と一緒に考えることが、新しい小売りの業態を作るような気がする。

どちらにしても、今年早くに持っていた7&IHDの株を売ってしまった自分には本当に腹が立つ。株は難しいなあとつくづく感じる。

もうすぐZ世代の時代が始まる!

もうすでにY世代は消費の主役になりつつある。ラグジュアリーブランドも考え方を変えないといけない

今週のROBIN REPORTではラグジュアリーブランドがZ世代にどう対応すべきかを考察している。

アメリカには26−41歳のミレニアル世代は72百万人、10−25歳のZ世代は67百万人いる。
収入のピークを迎えるのは35−55歳と言われている。このレポートでは2025年までにミレニアル世代は29−44歳となりラグジュアリーマーケットの50%を占めるだろうと予測している。

以前の中国のZ世代のレポートでも示したが、明らかにZ世代とY世代(ミレニアル世代)では考え方が違う。これは米国、中国と同じく日本でも同じことが言える。

ラグジュアリーブランドは、Y世代にはこれまでのような手法でマーケティングができるだろう。このレポートの言葉を借りると、Aspirational(憧れ、熱望)なメッセージを発信することで顧客をまだ惹きつけることができる。

しかしZ世代にはIntentional(意図的、計画的)なメッセージが必要となる。Z世代は自分にとっての価値を大事にする。その一つがサステイナビリティである。

このレポートでは面白い話が載っている。ラグジュアリーでも中古市場がここ数年すごい勢いで非常に伸びている。中古商品はZ世代には昔作られたけれど、初めて見る新商品なのだと。企業はこれまで以上に毎年多くの新商品を発表して凌ぎを削っているが、今や中古市場も大きなマーケットであり、Z世代には選択肢の幅がこれまで以上に多くあるということだ。つまり選べる範囲が多いからこそ、選ぶ基準を自分で持たないといけないということなのだろう。

そして今の多くの新製品は値段の安い商品なのだ。だからこそラグジュアリーはどうして高いこの商品を買わないといけないのかの意味、価値をしっかりとZ世代に伝えなければいけない。

今のミドル、Y世代の持つ憧れだけでは、ラグジュアリーは買わないのだ。

すでにサステイナビリティをテーマにして幾つかのブランドは行動を起こしているが、それだけでは生き残れないだろう。

ただ、このレポートでもZ世代がラグジュアリーのメイン顧客になるにはまだ時間があり、彼らが40代になった時にどういう消費行動における価値観を持つのかはまだわからないと述べている。あと10年はかかるであろうが、この10年で既存の販促手法が通用するY世代への対応を行いながら、Z世代といかに対話を続けながら、新しい価値観の共有を図ることが大切だと説いている。

もう企業から一方的なイメージ発信や憧れを押し付ける時代は終わりを告げようとしている。

メタバースのような仮想空間の中での共有時間、共有空間を共にしながら、距離感が近い中でブランドと消費者が価値を創造して共有することがさらに大事になってくるのだろう。

これから言えることは、もうファッションのピラミッドの構図はないのかもしれない。
昔はパリコレ、ミラノコレクションでのファッションショーを頂点にして、オートクチュール、プレタポルテとそのエッセンスが流れ、そしてハイエンドからミドルエンド、そして一般ブランドへとその年のファッショントレンドが行き渡ったのである。

だからこそ、ファッションデザイナーは絶大な力を持っていた。
しかしこれこそ、Aspirationalなものなのである。

これからは無名のアーティストがYouTubeで大ヒットして人気アーティストになるように、ファッションでもそういう時代がやってくるのだろう。

新しい時代にふさわしいラグジュアリーマーケットの予感

ミレニアル、Z世代にはもうシャネル、グッチ、ルイヴィトンはいらないかも??
百貨店が次に目指すラグジュアリーはここかもしれない!

今回のROBIN REPORTでは新しい時代のラグジュアリーの定義を提案している。

特にミレニアル、Z世代にはこれまでのレガシーは通用しない。だからエルメスのバーキンも興味ないのだ。これまでのブランド力がもはや通用しない若い世代には、そのブランドが持つ意味、物語、デザイナーの思いなどが明確になっていれば、それが少し高くても買いたくなるというのが今回のレポートである。

もはや価格でラグジュアリーブランドを決める時代は終わったと筆者は語っている。
若い世代にラグジュアリーブランドと認めてもらうには、
1、そのブランドにどれがおしゃれなのかを顧客が選択できるような選択の幅を持たせているか
2、センスが常に顧客を超越しているかのような態度を取らないで会話を楽しむブランドになっているか
3、なぜこんなに高い値段をつけているかの説明ができるような透明性を持っているか(ここでは売り上げの一部を寄付するなどの理由)
4、自らのご褒美に少し良いものを身につけましょうというような問いかけが顧客に行われてるか
5、ミレニアル世代とZ世代は持続可能性を重視しており、ブランドはこれらの次世代に対応するための強いミッション・ステートメントを持っているのか

などが重要だと述べられています。

そして最後に、
レガシーメゾンは、透明性を確保し、幅広い選択肢を提供することで、より身近な存在になる時が来たのです。親しみやすいラグジュアリー・ブランドの時代へようこそ。

と締め括っています。

百貨店などはこれまでの顧客にはこのようなレガシーブランドを提供し、新しい若い世代には彼らにとっての新しい時代のラグジュアリーブランドを提案するという気持ちというか考えが必要なのではないだろうか。

つまりラグジュアリーブランドの再定義が必要なのだ!

そこには日本文化との融合など伝統的なものが重要な要素になってくるように思われる。

中国のZ世代を読みとく!

日本とは大きく異なる中国のZ世代、でも本質は同じかもしれない

日本マーケティング協会の月刊誌マーケティングホライゾン12月号に寄稿したものを紹介する。

https://www.jma2-jp.org/article/jma/k2/categories/811-mh211201

ここでは世代論から中国のZ世代を分析したものだが、Y世代とも大きく異なるZ世代は日本だけでなく、世界で注目されている。

詳しくはサイトから読んでいただきたいが、Z世代やY世代にとっては地球温暖化、コロナなどが大きな影響を与えているのは間違いない。

その将来に対する不安感、恐怖感、絶望感が大きな問題と言える。
今こそ、将来に対して希望や明るい未来を提案することが大事と言える。

そのために我々世代が何ができるかを考えるべきだろう。

Z世代にはSDGSではなく、文化への貢献こそが百貨店の生きる道

儲けることよりも社会への貢献を重視するZ世代には百貨店は向いている

年始の日経新聞の記事を読んでいてZ世代に向けたマーケティングのヒントが掴めた気がした。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC14APU014122021000000/

Z世代の3割以上は社会課題の解決に貢献したいと思っている。地球温暖化、コロナなど彼らには将来は決してバラ色ではなく、不安しかないのであろう。
そういう時代になってきて、企業に求めるものはどんなことをしている会社なのかが大きなポイントなのだろう。昔は年収やブランドイメージが選択基準だったと思うが、今は転職が当たり前の時代。だから定年まで働くというのではなく、自分の専門性を高めながらも、自分として社会に貢献し、それに収入を得ることが大切なのだろう。

しかし、先月明治大学の大石先生の公開セミナーを聞いていて、先生が今のZ世代にSDGSは反応しないというお話を聞いた。
そこでは、単に会社として二酸化炭素の削減や電力使用の削減などの努力をしていることはあまり興味がないようだ。これはおそらく会社としてどう社会問題の解決に立ち向かうかという積極的な取り組みではなく、単にSDGSの目標達成に向けて数合わせをしている後ろ向きな取り組みに感じられるからだろう。

この点からすると、やはり企業は収益力を競うのではなく、どんな社会問題の解決を行うのか、どうやってそれを行うのかが大事になるのだろう。

これは百貨店のような収益力の低い小売企業には追い風だ。これまでは株主からの収益力への厳しいプレッシャーで、とにかく儲けること、稼ぐ力が問われてきた。

しかし、これからは企業としての存在意義をしっかりと主張することも大事ではないだろうか。

私は日本の百貨店の存在意義は日本文化の伝達者であるべきだと感じている。

今、日本の文化が見直されている。海外にいたときに茶道に多くの外国人が興味を持ち、いろんな話をしてほしいと言われた。
また着物もそうだし、和食器もそうだ。多くの外国人にとっては日本という国はとてもミステリアスな国なのかもしれない。

経済力でもう世界をリードできない日本はこれからは他にはない日本の文化をいかに守り、それを海外に届けていくかが大事ではないのだろうか。

百貨店は昔は日本の文化を守りながら、世界の優れた文化をいち早く日本に導入してそれを届ける役目をしてきた。

今こそ、日本文化の伝道者として百貨店は日本の伝統文化、芸能、着物、器などを守ることに力を注ぐべきだ。

Z世代にもこの動きはきっと支持されるに違いない。

温故知新という言葉がぴったりな2022年ではないだろうか?

ドンキ・ホーテは何故オンラインビジネスをしないのか?

ドイツのグローサリーストアから見るリアル店舗の魅力とは

今回のRobin Reportではドイツのグローサリーチェーンの快進撃を伝えている。
記事では双子のようなアルディとリドルという二つのグローサリーディスカウントチェーンが欧州だけでなく、米国でも店舗を拡大していて、強みである食品だけでなく、非食品分野にも力を入れ始めているので、アパレルや雑貨を扱うスーパー業態や専門店に注視するように警鐘を鳴らしている。

この記事で面白いのは、この2つのディスカウントストアの営業形態がドンキホーテと似ているところだ。毎週商品は入れ替わるので、いつきてもおもちゃ箱のような驚きと楽しさがある。そして今では食品だけでなく、ブランド物のアパレルや雑貨も食品と関連した形で展開されている。

この2つのグローサリーストアは現在、オンラインショッピングを実施していない。しかし、アルディでは数年後に数量を限定した形で雑貨、アパレルを中心にオンラインショッピングを行う計画とのことだ。

この記事を読んでいて、リアル店舗の魅力というのを改めて考えさせられた。

この記事を読みながら、ふと思ったのは、ドンキホーテはオンラインショッピングやってるのかなあと。調べてみるとやっていない。

確かにドンキホーテの楽しさはオンラインでは伝わらないような気がする。シンガポールにいた時も明治屋さんよりもドンドンドンキーの方が楽しかったし、安くて品質もよかったような気がした。ほぼ賞味期限切れのお菓子がとても安く売られていてよく買ったものだ。これは日本では違法だろう・・・

このように考えてみると、リアル店舗の魅力とはオンラインショッピングでは味わえないものなんだと感じる。そこを追求すればリアル店舗の生き残る道はあるように思う。

百貨店の催事はオンラインショッピングしたら、魅力は半減してつまらないものになるだろう。私が店長をしていた大丸東京店の名物催事のワインフェスティバルでは無料試飲が大きな魅力だった。このような催事を中心に展開することがリアル店舗の生き残る道のように思われる。

食品催事をオンラインでやったりしている百貨店もあるが、これはドンキホーテをオンラインでやるようなものであり、うまくいかない気がする。

なんでもかんでもDXしないと生き残れないというコンサルに惑わされることなく、リアルの生き残る道を模索してほしい。

おそらオンライン部門を切り離したサックスなどはその方向になるのだろう。オンラインでは品揃えできない意外性と煩雑さをどうアピールするかではないだろうか。

ファッションレンタルビジネスはアフターコロナでどうなる?

Rent the Runwayの苦戦に見る顧客のライフスタイルの変化

今回のRobin ReportではファションレンタルビジネスのRent the Runwayの苦戦を伝えている。

Rent The Runway(RTR)はこれまでは定額月159ドルで好きなお洋服を借りることができるファッションレンタルビジネスだ。買うのではなく、流行のファッションを毎月変えることで、ストックしたくない若い世代のニーズやお財布にも優しく、環境にも優しいという時代の流れにあったビジネスとして脚光を浴びた。
事実、このマーケットはレポートにもあるように10年間で11億ドルから36億ドルマーケットにまで広がったのだ。

しかしコロナ禍になり、多くの不幸要因が重なった。
まずレンタルビジネスはワーキングウエアというよりも、メインはパーティウエアなどいつも着ない、または2回同じのを着たく無いという需要にフィットしていた。しかしこのパーティは消えてしまった。

また人の使ったものを使い回すことで感染リスクが高いことがブレーキになった。

さらにRTRで扱っているのはシャネル、エルメスのような最高級ラグジュアリーではなかった。いわゆるセカンダリーブランドであり、ワークウエア需要が減る中で大きく影響を受けたブランドと言える。

つまりコロナ禍でのライフスタイルの変化に全くついていけなかったのがRTRと言える。
そんな中で力を入れているのが中古品販売だ。借りて気に入った商品をそのまま買いたいという消費者ニーズに応えるものだ。

実際に私も米国のファッションレンタルビジネスに投資をした経験があるが、最初からファッションレンタルビジネスでの収益モデルのメインはレンタル商品の販売であった。毎回いろんな商品が送られてくる中で気に入ったお洋服を定価よりも安く買えるというのは消費者には魅力的であり、同時に事業としても収益性の高いものだった。

RTRではまず、パーティー需要のような2回は着たく無いものをレンタルするというところからのスタートであり、これはパーティーが多かった米国ならではのマーケットと言える。また女性のワーキングウエアとしてのワンピースやスーツなども毎月着替えたいというのも合理的であったのであろう。

しかしこうした需要がなくなってきた中では、値段を下げて対象顧客を広げて、リセールに力を入れていくしか無いということなのだろう。
しかし果たしてそれが今後うまくいくのだろうか?

私はそもそも、ファッションレンタルビジネスではそのブランド力が大きな鍵になると思っていた。ブランド力があり、なかなか手が出せないお洋服だからこそ、レンタルで借りてでも着てみたいというニーズが生まれる。
これは高級外車に一度は乗ってみたいというニーズと同じような気がする。

しかし今の若者は車には興味を示さない。当然ポルシェやベンツに乗りたいという願望もない。車よりもカッコいい自転車が欲しいのだ。
同じことがファッションの世界でも起きているのではないだろうか。もう別にシャネルに興味はないという若者が増えているのだ。

特にコロナ禍で環境問題が大きく取り上げられている中で、これまでのようにファッションビジネスは毎年トレンドを作りだしながら、毎年お洋服を買い換えないといけないと誰が思うのだろうか。

一方このレポートではラグジュアリーブランドのリセールを専門にしているReal Real との差を挙げている。
https://forbesjapan.com/articles/detail/43146

こちらは絶好調のようだ。これは扱っているブランドがシャネル、エルメス、グッチというラグジュアリーブランドである。しかも上記の記事によればZ世代にも好調とのことだ。

これは明らかな2極化消費の典型と言えるのかもしれない。数少ないラグジュアリーブランドのみが生き残り、その価値を意地できないセカンダリーブランドは消滅してしまうというのが現実のものになってきているのだろう。

しかし、ライフスタイルとしてパリのオートクチュールを頂点としたファッションデザインがプレタポルテ、既製ブランド、ファストファッションへと下に流れていくというような構造はもはやなくなりつつあるのかもしれない。

2極化消費の中で本当に限られた富裕層だけが楽しむファッションと一般人の楽しむファッションが明確になるかもしれない。

前澤さんの宇宙旅行こそ、今の富裕層の究極レジャーであり、一般人にはとても手が出ない。

逆にいうと、レンタルすることで富裕層の気分を味わうことを求める人はこれから少なくなるのかもしれない。

新しい価値観が生まれようとしていることは確かだ。

それにアジャストできる企業とできない企業の差は大きくなる。

最近の商業施設の改装、リニューアルをみていて、まだまだ東京で流行っているブランド、施設のコピー版を必死になって作ろうとしてる気がしてならない。もうその時代は終わっている。

先日大阪に行って、最新の百貨店のリニューアルをみたが、ちょっと残念だった。

食とリビングを差別化ポイントにしていて、一見すると面白そうだなと思ったが、ふと、これで儲かるのかなと。

まずはお客様に喜んでもらうことが一番なのだが、持続しなければ意味はない。
コロナで疲弊した商業施設の再開発、リニューアルはこれからどんどん進むだろう。
でも今の手法では絶対にうまくいかない。潰してマンション、いや老人ホームにしたほうが投資効率は上がる。

これが悲しい現実であり、個人投資家の端くれとしてそういう企業には早く退出してもらいたいと思う。


アメリカの百貨店から見る、リアルとオンラインの融合

Macy’s、Saksに見るリアル店舗中心の小売業の今後

オンライン部門を店舗事業から切り離すことで株価を上げたMacyデパート

今回のRobin Reportではサックスフィフスアベニューに引き続き、メーシーもこれまでの実店舗での販売とオンライン販売を統合させるこれまでの動きをやめてオンライン事業は店舗事業から切り離すことを取り上げている。

レポートでは懐疑的にこの動きを捉えているが、私には至極当然の動きに見える。
この筆者もいまいち、小売の現場を理解していないのかと疑問に思ってしまった。


というのも、今の小売ビジネスの基本はお客様の特定と商品の特定をした上での売買が基本であるということだ。

これにより、誰がいつ、どこで、何をどのように買ったかを個人の特定と商品の特定ができるレベルでないと、今後の商品提案や、購買履歴の分析ができないからである。

これをAmazonのようなオンラン販売では完全に把握できる仕組みになっている。

しかし、これまでの小売業、百貨店やスーパーでは現金販売が中心であり、POSレジでも個別単品レベルまで売り上げを把握するという基本設計ではなかった。
昔は何が売れたかが重要であり、顧客はマス広告で商圏内から呼べば良いという考えだった。
システムもどうしても何が売れたのか、値段帯は、時間帯などというのが重要だったのだ。
それで十分だったということは、今思うとざっくりとした商売だったのだ。
結局、経験、勘、度胸での商売のレベルからは脱却できない仕組みの上で成り立ってきたのだ。

まして、今では百貨店でも自分で仕入れるのではなく、消化仕入れやテナント貸しという場所貸し業に舵を切っている。
これはこれで人件費の削減や効果的な売り場の活用といった面では理にかなっている。

しかしお客様との関係性においては、このいかなる場合でも個人の特定ができ、しかも買った商品が絶対単品レベルまで把握出来なければ、オンライン事業者と対峙して戦うことはできないのである。

Amazonが今、リアル店舗を拡大しようとしている。しかし、おそらく彼らの狙いはオンラインショッピングの延長線として、個人を特定できない現金販売はできないようにするだろう。事実、Amazon Goでは入店時にIDの確認をすることでキャッシュレス販売を可能にすることで、IDの取得とレジ経費の削減を同時に実現している。

今の日本の百貨店業界を見ると、やはりまだ自らでオンライン販売を実現して、リアル店舗との融合を図ろうとしているように思われる。

しかし私の経験でも、今の店舗事業を肯定した上で、テナント貸しを拡大する現状では、オンライン事業との統合は不可能であり、今回のMacyが判断した決断に従うべきではないかと思う。

丸井は百貨店ではないが、すでに自らでの販売を捨てて、カード事業を中心に個人の特定を強化しながら、商品の絶対単品レベルの把握をしようとしている。しかし、これも私に言わせると中途半端である。自社カードに頼るのではなく、アマゾンのようにオンラインでの販売による個人の特定がベースとすべきであり、自社カード会員の強化に走りすぎるのは危険ではないだろうか。
ルミネも同じようなことをしているが、店舗事業との統合は難しいように思われる。おそらくカードビジネスでの連携となるだろう。

百貨店でも自社カードの会員獲得にとても力を入れているが、今や、本当にそれだけの魅力を提供できるのであろうか?もっというと、そのために販売促進コストを積み上げ、ポイント経費の負担に耐えるために、本来の広告宣伝費を圧縮することは、夢を与えるブランドとしての百貨店のとるべき戦略なのだろうかと思ってしまう。

昔から、百貨店業界はアメリカ詣でといって、30年先をいくアメリカの百貨店を参考にしてきた歴史がある。
私も百貨店劇場論を熱心勉強したことを思い出す。

今こそ、アメリカの百貨店で何が起こっているのかを見るべきではないだろうか?

ぜひ百貨店経営者には安易なDX亡者に惑わされないことを祈る。

前にも紹介したが、下記の無料翻訳ソフトを使えば、英文記事は簡単に日本語で読むことができる。ぜひみなさん試してもらいたい。
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