シリーズ#12 コトラーのリテール4.0を斬る

これからの小売業は販売しないお店が増えるかもしれない

今日は7つ目の原則「人間的であれ」について考える。
ここではデジタル化すればするほど、人間的なファクターが競争優位になると述べている。あらゆるバリューチェーンにおいて、再び人間を中心にすることの大切さを説いている。
そして、3つのS、Service(サービス)、Sociality(社会性)、Sustainability(持続可能性)が重要であると。

一つ目のサービスはまさしく、人間的な心のこもった接客と専門性の高い知識とサービスの提供だ。前回にも話したが、以前の東急ハンズの販売員はプロの専門家であった。本書にも出てくるが、パタゴニアの販売員は山のプロであルと同時に環境をいかに守るかのプロでもある。アップルストアの販売員はアップル製品にまつわることなら色々教えてくれる。決して販売を目的に接客しているようには感じられない。以前に話した、売らんかなの姿勢がみられない販売スタイルである。だから売れるのである。

2つ目の社会性とは社会として必要とされる店舗であるかどうかである。本書では営業時間以外でも開放されているアップルストアのイベントスペースを例にあげているが、私の経験で言えば、東日本大震災の時に多くの百貨店が緊急避難場所として、売り場を一般客に開放することも社会性の一面だと言える。昔、経済学の授業で百貨店は準公共財であると学んだ記憶があるが、今でもその定義に該当するかは?であるが。。
地域の中でどういう社会的役割を持つのかが大事である。

3番目の持続可能性はまさしく、これからの時代に必要なものである。今のコロナウイルスによって大きく環境が変化している。また同時に地球温暖化による自然災害がこのコロナ予防と相まって、さらに私たちの生活行動を変容させている。この変化にどう小売業として対応していくのかが問われている。例えば、コロナ対策として企業としてどこまで対応しているのか、医療従事者への支援はどうしているのかは顧客には気になるところだ。またフードロスの問題は大きく取り上げられている。賞味期限切れの商品は廃棄することは今では悪であるが、それをどう解決するかはなかなか一企業では解決できない。こういう取り組みを率先して行う企業を応援したくなるのが今の社会、消費者であろう。

このように企業はデジタル化により、さらに効率的、効果的なビジネスモデルを構築する必要があるが、対顧客に対してはいかに人間的な暖かさと温もり、そして地球と生活を守りながらも、人間らしい生活を楽しむためのお手伝いをすることが求められるのである。
人間力のある企業であるかがキーワードになる。

その視点で考えると、これからのリアル店舗というのは販売をメインに考えてはいけないのかもしれない。
つまり、リアル店舗は顧客に体験をしてもらい、同じ価値観を共有するスペースなのかもしれない。
アップルストアはこのコンセプトに近いものかもしれない。サムソンなどのIT企業でも販売を目的にしない体験店舗を出している。また家電企業、自動車会社のショールームというのは昔からあるが、これこそ顧客への情報提供&情報収集の場である。
メーカーであれば、店舗で売上が上がらなくても、ネットや他の場所で売れるのではあれば問題ない。アメリカでは店舗はショールームで実際に目で見て、試着をするためのスペースと位置付けているアパレルベンチャーも増えている。
このように、小売業はこれまでの店舗では売上を上げないといけないという考えを捨てて、メーカーのショールームを家賃収入として導入していくことを加速すべきではないだろうか。ネット企業がリアル店舗を相次いで構えているのもうなづける。
当然、このビジネスモデルはリアル店舗だけで見ると、今よりも収益効率は下がる。しかしそれに耐えうる企業構造に変えればいいのである。

顧客が求めているのは、ネットでは出来ない体験である。また、専門的な知識を持った販売員との人間的なコミュニケーションである。そうすると小売店の定義を変えないといけないかもしれない。
これまでの、「小売店は商品、サービスに付加価値(高度な接客、専門的アドバイス)を付けて販売し収益をあげる」から「小売店は顧客に店舗でしか体験出来ないもの(試着、試飲、肌触り、使いごごち、他の使い方など)を人間でしか出来ない付加価値(温かみ、温もり、笑顔)を付けて、顧客と一緒に価値観を共有する場所」になるかもしれない。
まさに売らんかなのイメージの全くない店舗こそがこれからの小売店舗だ。

今までの売上を業績指標としてきた小売業は全く考えを変えないと顧客体験を満足させることは出来ないだろう。


私が若い頃、紳士服の担当であった時、シーズンごとにアパレルメーカーの展示会に出かけた。展示会での楽しみはファッションショーであった。そのシーズンごとのデザイナーのテーマや考え方が伝わってきた。このファッションショーは限られた人しか見ることができない貴重なものであった。
このファッションショーをコンパクトにしたものを、昔の百貨店では売り場でイベントで開催したりしていた。あの当時は人気があったものだ。
今思えば、あの時代はファッションショーは、今のアップルストアでのイベント、講習会かもしれない。
ワクワク、ドキドキすることは時代と共に変わる。その動きについていけない企業は淘汰される。当たり前の話である。


店舗で売れなくても、儲かる仕組み作りをいかに構築するかが大事であろう。

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