シリーズ#13 コトラーのリテール4.0を斬る

小売店舗はリアルでなきゃダメなことをもっと追求しないと

今日は第8の原則「バウンドレスであれ」について考える。
バウンドレスであれとは、小売業は壁で仕切られ、1カ所に収まっているリアル店舗であるという意識を決定的に超越せよ、(P138)という意味だ。お店を起点にそれまでお店だけで完結していた、注文、試着、お渡しなどを自宅や通勤途中の場所などを使って顧客の都合の良い時間、場所で提供しようというサービスである。
ここでも、顧客とはスマートフォンをメインに常に繋がっていて、商品選びから試着、購買決定、返品などを店舗でな区てもできるようにするということだ。

この本でもでてくるザッポスという靴の通販サイトはそのカスタマーサービスで有名だ。ザッポスの奇跡という本まで出ている。
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4331515052?ie=UTF8&tag=usbizinc-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4331515052

この会社は2009年にアマゾンに買収されて、今はアマゾンの傘下だが、そのサービスは前と変わっていない。通販サイトは普通、コールセンターでの問合せは受け付けない。なぜなら、人的コストが高くなるからだ。アマゾン本体ではコールセンターの電話番号はわからないようにしていて、探すのは一苦労だ。

しかしザッポスの場合、積極的にコールセンターに電話をするように顧客に進めている。電話番号もすぐにわかる場所に表示されている。ザッポスでは、通販サイトでありながら、人的な接客相談サービスを充実することで顧客との繋がりを深めており、ロイヤルカスターづくりを行うことで、一人あたりの購買額をあげているのである。

ザッポスの強みである、接客サービスこそリアル店舗の強みであるが、それを通販サイトで実現しているのがザッポスだ。

ということは、リアル店舗はこの逆の戦略を取ればいいのだ。通販サイトが得意なことをリアル店舗でやってしまう。
例えば、リアル店舗なのに、品揃えはサイトと同じだけ多くの種類が用意されている。そして、それを店頭で自由に見て、試着、試用することができるようにするのだ。こサービスには事前にネット予約してもらうことが必要だが、それが可能になれば、顧客は必ず店舗に行きたくなる。
また店頭で見て、購買決定しても持ち帰らずに配送をすぐにしかも無料でしてくれるサービスができれば、店舗に仕事中でも寄リたくなる。

つまりネット業者がリアルの利点を取り入れるとコスト高になり、収益が下がると考えてしまうのが普通だが、それを可能にするビジネスモデルを構築すればいいのである。ザッポスはそれを実現している。
だから、リアル店舗中心の小売業はもっと、顧客の立場で考えて、リアル店舗に不満を持っていることをネット企業を参考にしながら、見つけて、それを解決してあげればいいのである。きっとそれはコスト増になるサービス、仕組みになるだろう。しかしそれを可能にするためのビジネスモデル変革を企業全体で進めるべきなのである。
言うは易し行うは難しだが、ザッポスでも最初はそうだったはずだ。

そしてもっとも大切なことは、いかにリアル店舗はリアルでしか、満足できないことを顧客にアピールするかである。

今日、私は久しぶりにお茶のお稽古に行ってきた。
お茶のお稽古はやはりお茶室のある環境、雰囲気が大事だと感じた。風炉から時々飛び散る火花がなんとも言えない音を醸し出し、心が落ち着いていくのを感じる。お茶のお稽古は動作の作法を学ぶことも大事だが、それよりも大事なのは、全ての動作を丁寧に行い、扱う茶器を大事に扱い、お茶をお出しするお客様を大切にすると言う全体の流れを学ぶことである。
これはオンラインでは絶対に学べることはできない。今日もお稽古をした後、なんとも言えない清々しい気持ちになった。これこそ、リアルでしか味わえないものである。


同じことがヨガの教室でもあると感じる。私が通っているシンガポールのヨガクラスではヨガの前後に必ず瞑想を行う。瞑想を全員で行うことに一体感を感じることができる。そしてヨガになってからも、先生は一人一人のポーズの細かな指導があり、そのちょっとした修正が大切だなといつも感じる。これもリアルでしか味わえないことである。

今、オンラインセミナーが盛況だ。しかしお茶では作法の手順はオンラインで勉強できても、精神的な修養はオンラインでは絶対にできない。とするならば、お茶のお稽古場では、作法よりもお茶の精神と作法がどう関わっているのかをその一人一人の作法の中で説いていくことが大切であろう。お茶のお稽古場でしかできないことと、オンラインでもできることを明確に分けることが必要だ。まあ、お茶の世界でオンライン授業はなかなか進んでいないのが現実だが、これもこのコロナを機会に進んでいくことを期待したい。


一般の小売業では店舗でしかできないことをまず顧客の目線で、自分たちで確かめることが必要ではないだろうか。
お茶、ヨガなどのサービスではなく、物販であっても必ず店舗でしか満足できないことがあるはずだ。
簡単にできることは馴染みのお客様に「なぜ、うちのお店に来たくなるのか」を尋ねることから始めるのが良いだろう。
それこそが店舗のコアコンピタンスなのである。
お茶のお稽古場のようにお店の雰囲気を楽しみたいというお客様がいるかもしれないし、有名な絵画、美術品があれば、それを見に来る人もいるだろう。販売員との会話を楽しみに来る人もいるが、これはオンラインで代用できるかもしれない。

バウンドレスであれとは、店舗とか、オンラインとかのチャネルの問題ではなく、顧客にとってなぜ、そのお店で買いたいのかの理由を探しだし、それを強めるためにどうすればいいのかを、リアルとネットを使いながら考えるということだ。

だから、そんなに難しい話ではない。オンライン、オフラインはその後の手段であり、大切なのはお店に来る目的を探し出すことだ。
あなたのお店はスタバのようなコミュ二ティサロンとお客様は捉えているかもしれない。

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