シリーズ#15 コトラーのリテール4.0を斬る

今こそ小売業は変革する時だ!

今日は最後、10番目の原則である「勇敢であれ」について考える。
本書では「小売業は、自社のビジネスに未来がないかもしれないことを認める勇気を持たなくてはいけない。そして、変化を受け入れなくてはならない」と述べている。そして、これまでの時間のかかる変化対応ではなく、顧客と話し合いながら進めていくリーン方式をとって、改革を進めなければ生き残れないと説いている。


まさしく、今のコロナショックでは小売業全体が大きなダメージを受けている。特に飲食業、旅行業、エンターテイメント業は存続の危機となっている。小売業でも百貨店、ファッション専門店などは存続の危機であろう。

本書では、これまで時代の流れに適合できずに破綻した企業の紹介をしている。写真フィルムにこだわりすぎたコダック、自らの携帯電話に固執したブラックベリー、ノキアなどである。
また米国でレンタルビデオの最大手であったブロックバスターがネットフリックスに負けてしまったのも記憶に新しい。

今だと、ZOOMなどのビデオ会議の普及により、多くの企業がオフィスを縮小したり、事実上なくしたりしている。間違いなく、東京都心でのオフィス需要はこれまでとは違った形になるだろう。都心のオフィスが減れば、飲食店には大打撃だ。今回のコロナによる社会的な現象(ワーク@ホーム)とデジタルの進歩(ビデオ会議システム)により、これまでの需要がなくなり、新しい需要が別の場所で生まれてくるのである。

こういう時こそ、小売業は勇気を持って、新しいことに挑戦すべきだとコトラーは説いている。
日銭商売で、毎日対前年の数字とにらめっこしながら仕事をする小売業の人たちは、どうしても考えが短期的になりがちだ。しかし、今の状況は短期的なことを考えていても、解決策は生まれない。
今の百貨店はブロックバスターのようなものだ。まだ、少しの間は売上は稼げるだろうが、これまでの商売のやり方では、必ずネットフリックスのような新しいネット企業に負けてしまう。彼らはまだ小さい企業だからこそ、小回りが利く。だから顧客の目線で商品開発、サービス開発を進めることが可能だ。しかし伝統的大企業はこれまでのビジネス習慣、設備、サービス、品揃え、人材といった制約の中で改革をしなければいけない。しかし制約をクリアできる改革はないのが現実だ。

以前のソニーが本体の家電で苦戦していた時に、本体の収益を支えてのがゲーム事業であった。そういう本体とは一見すると畑違いの事業へのトライを行うことで、コロナショックのような社会の構造そのものが変わろうとしている時に救世主となるのである。

新規事業の開発には既存の技術、ノウハウが生かせるものをベースに広げていくのが王道であると言われる。しかし、今の小売業でこういうやり方で生き延びれるのだろうか。
江戸時代から明治へと時代が変わる時に、活躍した坂本龍馬や西郷隆盛のような、自らの命と引き換えにしてでも、国を憂いて、体を張って改革を進めるリーダーが今求められる。

必ず、解決策はある。ホテル業界でもオリンピックを目標に多くの建設ラッシュが続いてきた。しかしホテルはもういらないのだろうか。インバウンドには多すぎるかもしれないが、ターゲットを変えればマーケットはある。
インバウンドでもそうだ。確かにこれまでのような形で、団体旅行客が来ることは当分ない。だが、必ずある程度の数は来るのだ。それに向けた戦略をとり、そのターゲットに選んでもらえる店づくりにすれば勝てる。なぜなら、まだ誰もしていないから。最初にやれば勝ちだ。
耐えている時間はない。動くしかないのだ。

小売業で問題の答えを探すには一つ道はしかない。顧客に聞くことだ。株主、社外取締役、投資家などの声を一番に聞いてもダメなことは明らかだが、これまでそういう風潮になっていたようにも思える。

私の好きな言葉はサムウオルトンが残したこの言葉だ。

Retail is Detail

お客様に寄り添うことで小売業は成り立っている。

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