高級食パン店は地方でも売れるのか?

郊外型百貨店がうまくいかなかったのと同じことにならないのか

8月15日の日経で高級食パン店の地方進出の話が出ていた。富士総研の調べでは、食パン専門店の市場は21年に270億円のピークとなり、その後は緩やかに落ち込み、24年には4%減るとされている。理由は贈答需要がコロナの影響でなくなったことが大きいとされている。
果たして今後の高級食パンマーケットはどうなっていくのだろうか?

私は一本(2斤)1000円前後の高級食パン店の将来は厳しいと見ている。理由は普通の食パンが1斤150円前後であり、その3倍以上もする値段で食パンを食べるという行動は完全にハレの行為であり、この行為は日常的には根付かないと見ている。
確かに富裕層にとっては1斤500円の食パンはあまり問題にならない値段かもしれない。でも毎日これを食べ続けるだろうか?
以前に大阪の百貨店で食品売り場の改革を推進していたことがある。その時にコンサルタントをお願いしたフードコンサルタントのおおやかずこさんから2年間色々とご指導を受けた。その時に感じたことは消費者の目線、行動を5感で感じながら食を考えるということだ。


その当時、阪神百貨店で1匹1000円のサンマが売りに出ていた。確かに脂ものって美味しそうなサンマであった。しかし皆さんはこのサンマを買うだろうか?
誕生日とかハレの場や、贈答品としてはいいかもしれないが、毎日の食卓には買わないだろう。
1000円の高級魚はサンマ以外であればいくらでもあるので、1000円の魚そのものは決して高いものではない。しかし人間の頭の中にはある程度この魚はいくらぐらいが適当という認識、つまり商品予算が存在している。
だから、サンマと聞いたら、だいたい1匹100−300円くらいというのが適当な値段と言えるのではないだろうか。
だからその予算範囲を大きく超える価格の商品はいくら絶対価格が安くても高く感じるし、毎日買おうとは絶対に思わないのである。

多くの百貨店が10年前ぐらいに地方郊外店に進出した時期がある。しかしことごとく失敗している。私が担当していたのは、ららぽーと横浜店、浦和パルコ店にあった大丸の食品に特化した高級スーパー的なお店であった。
ここも結局、利益を出せずに閉店に追い込まれた。理由は百貨店価格の生鮮食品、惣菜、和洋菓子をデイリーで買う人は郊外には予想以上に少なかったということであった。確かに商圏人口、世帯別の年収分布などで見れば、採算が取れそうなデータではあった。しかし、都心の百貨店の入店客数と比べると比べるまでもない少なさであり、そんなに高級な食品をデイリーで買う人はいなかった。
都心のデパ地下でも毎日惣菜を買って帰る人は稀であり、いろんな人が入れ替わり買ってくれるので商売として成り立つのである。RF1のサラダを家族4人分買えば、安くても2000円はする。それにメインの惣菜を買うと1食5000円はかかる。夕食にそれだけのお金を毎日出せる家庭はそう多くないはずだ。

ではいくらの食パンならデイリーで売れるのだろうか。
私は高級食パンは1斤300円予算の商品だと思っている。そしてこの予算の80%から130%までの範囲であれば顧客は買うことができる。つまり240円から390円だ。もし2斤で売るなら500円予算となるだろう。だとすると、400円から650円ということになる。
この考え方は船井総研の故船井幸雄氏の理論であるが、とても人間の本質的なところをついているのではないかと思う。
興味のある方は下記のサイトを参考に読んでいただきたい。

一体、デイリーで食パンを買うのに1000円予算で買う人がどれくらいいるかということだ。普通は200円予算だろう。そして少しグレードが上がっても300円予算だろう。500円予算の人は極端に少なくなるだろう。これは1000円のサンマと同じ価格になってしまう。
私も湯河原のブレッド&サーカスという全国的にも有名なパン屋の食パンを時々買うが、2斤720円である。これは1斤にすると360円で300円予算で買える価格帯だ。これが1000円になったら、買わないかなと思う。やはり予算として1斤500円は私には無理である。

このように価格というのは、それぞれの商品に個々人が予算を付けているのであり、それは絶対価格として高いとか低いという問題ではない。富裕層でもスーパーに行くと、特売や少しでも安いものを買いたくなるのはお金を持っているとかどうかの問題ではないのだ。そこが人間の心理である。難しいのは人それぞれで予算が違うと言うことだ。

高級食パンはこれまで贈答マーケットを取り込みながら、伸びてきたようだが、今のコロナ禍で通販に乗り出しているところもある。しかし配送料が高い。配送料がパンと同じくらいする。それでは売れない。
食パンは食パンである。デイリー需要を狙わないなら、都心の百貨店や店舗で数量限定販売などで展開するのがいいだろう。デイリー需要メインで、郊外や地方に出ていくことは絶対におすすめしない。最終的には地方百貨店と同じ末路になると思う。

私は、船井理論の価格帯の話は大好きである。
今でもいろんなお店で売ってる値段を見ると、790円、1280円とかがよく見受ける。
これは1000円予算の人が見た時に魅力的な値段なのである。
1000円予算の人は800円から1300円までを買うことができるが、790円と言うのは台割れ価格といって、700円台の商品に思えてしまう。800円までならそのレベル商品だと思っている人に10円安い価格を見せるととても魅力的な価格に見えるのである。
また1280円も1300円までなら出せると思ってる人に安心感と言うか、安いと感じさせる価格なのである。
皆さんも一度、スーパーや小売店で価格の値付けを見ていただくと、この理論が今でも広く使われているのがお分かりになると思う。

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