NEW シリーズ#2 コトラーのマーケティング4.0を斬る

吉村大阪府知事のTiktok見たことあります??

最近コトラーの本を再勉強する中で、SNSについて普段使わないSNSを今、試している。その中で気になるのが動画投稿サイトだ。
その一つがTiktokである。これは中国で開発されたアプリで動画投稿サイトである。最大60秒の動画を投稿できるのだが、基本は10代の若者がメインターゲットである。

なんと、このTiktokに吉村大阪府知事と鈴木北海道知事(少しだけだが)が投稿しているのだ。中身はいたって普通で、ふざけているものではないが、あくまでも中高校生を対象にした語り口であり、きっと大阪府民の中高生には評判がいいのではないかと思われる。私を含めたミドル、シニア層は元々動画を見る習慣もないのだが、若者にはテレビよりも重要なチャネルなのである。そこにきちんと投稿しているのは吉村知事だけである。いや、この先見性は素晴らしいと感心した。さすが商売のまち、大阪だ!
小池知事は自らの投稿はなく、誰かが編集した揶揄された投稿があるだけだ。ここにこれからの時代を引っ張っていくリーダーは誰かというヒントがあるように思われる。

今日のテーマは3章「影響力のあるデジタルサブカルチャー」を検討する。この中ではデジタル時代の3つの主要セグメントとして、若者、女性、ネチズン(ネットをメインに活動する人)をあげている。


若者は新しい製品や技術のアーリーアダプター(新規採用者)であり、トレンドセッター(トレンドをいち早く追いかける)、ゲームチェンジャー(新しいことを生み出す推進力の持ち主)である。彼らの力をより大事にしないといけない。

これまでは、日本では若者は人口的に少ないため、マスマーケットとして団塊、団塊ジュニア世代を狙ってきたが、世界を見ると若者の人口は確実に増えている。そして今回のジョージフロイド事件を単に発した黒人運動も香港の独立運動も若者が動かしている。この黒人運動も若者がデジタルの力を武器に全世界に動画を共有して、世界レベルでの人種差別撤廃運動になっている。

なのに、日本企業のマーケティング活動は昔のままだ。若者はすでに見ないし、所有もしていないテレビを軸に、新聞、雑誌などがまだまだ重要な位置を占めている。ネットもやっているが、ホームページ、Facebookなどが主流でYouTubeのような動画サイトではない。考え方が、まず見せる画面ではなく、読ませる画面が基本になっている。

若者はもう文字は読まないのである。だから、私のこのブログも若者には全く興味がないだろう。
だから私も今後は動画での投稿に変えないといけないと真剣に考えているのだ。

企業は若者、ネチズンよりも、女性を重要視してきた。しかしそのアプローチは昔ながらの情報提供スタイルだ。
今の女性は情報を自らのネットワークを使いながら、徹底的に集める(本書ではインフォメーションコレクターと呼ばれている)。だから企業は女性に教えるというスタイルではなく、教えてもらう、一緒に作り上げるという共創の概念が必要なのだ。
インターネットを使えば、有名タレントと zoomで直接お話することも可能だし、もうすでに始まっている。これは有名人と一般市民との垣根がどんどん下がってきている証拠である。この流れにどう企業は対応していくのかが問われている。zoomを使ってライブイベントをして、その中から直接憧れのタレントさんと話すことなんて、全然普通にできる時代になったのだ

またネチズンは自らネットに投稿をするため、この人たちに企業の味方、推奨者にどうなってもらうかが大きな課題だ。そのためには、お金よりも行動が重要なのだ。
吉村知事のように自らTiktokに出て、中高生に語りかける、そしてインタラクティブに交流をすることでますます、知事という有名人との距離が縮まり、その親近感を持ったネチズンが勝手に吉村知事の応援をしてくれるのだ。
もうお金で評判をあげるというのは昔の話だ。

今日、河井議員夫婦が買収の疑いで逮捕されたが、もうお金をばらまく時代はデジタル社会では終わりを告げているのだ。
この本にも書かれているが、ミドル、シニアは若者の行動に追随していくものだと。確かにシニアでもスマートフォンを持っている人は増えているし、私も今回、意外にもTiktokにはまっており、毎日空いた時間にチェックしている。いや、楽しい。

今回のコロナショックで時代は完全にデジタル社会になった。そしてその主役は若者である。彼らの動きに対応していかない企業は淘汰されるであろう。今回のコロナショックで痛手をおった、古い体質の企業(流通、旅行、ホテル、観光、飲食店、外食など)には残された時間はあまりにも少ないのではないだろうか。

若い人が来ない店、施設に未来はないなあ


NEWシリーズ#1 コトラーのマーケティング4.0を斬る

スマートフォンと5Gで世の中はどう変わるのだろう

今日からは新しいシリーズとして、2017年に刊行されたコトラーのマーケティング4.0にそって、世の中を4.0の切り口で考えていきたい。
この本は前回のコトラーのリテール4.0の前に出た本であり、3年前ということもあり、いささか古いトレンドではないかと思ったが、再度読み直して見ると今のコロナショックでも十分に通用する内容となっており、敢えてこの本を取り上げることにした。

今回は1章のつながっている顧客へのパワーシフトについて考えたい。これは今の世の中はインターネットで全てが繋がるようになり、どこにいても瞬時に情報が手に入る。しかも、多くの人がスマートフォンをパソコン代わりに使う時代になった。そしてスマートフォンはほぼ365日24時間消費者の手元にあり、常に情報と繋がる状況を作り出した。
全ての企業は消費者、一人一人が高性能のパソコンを持ち歩き、常に情報を取れる中で、何を買うべきか、何をすべきかを検討しているということを再認識すべきと説いている。

今回のジョージフロイドさんの殺害をきっかけに始まった黒人差別運動もやはり、白人警官による虐待行為が7分も録画され、それが全世界に一斉配信され、多くの人が同時にそれを見れる環境になったことが大きい。
これまでなら、そういう動画はほとんど録画されることはなかった。また今のスマートフォンのカメラ性能は優れており、またその動画を編集して、配信することも簡単に誰でもができてしまう。動画こそ、動かぬ事実であり、これまでの言葉よりも多くの人の感情に訴えるものである。

今の若者は言葉よりも写真、動画でコミュニケーションを行っている。私たちミドルはFacebookやブログでのコメントに重きを置くが、若者はインスタグラム、スナップチャット、TikTokなどの映像を重視したツールが大好きだ。
私もTikTokを試したが、確かに短い時間で動画が流れており、短時間で面白い、面白くないを判断し、それでフォローするかを決めるという文字にはない速さを感じる。
今の消費者はこのスマートフォンとこれから普及する5G(高速インターネット回線)により、ますますどこにいても、どんな情報もネットからだけでなく、友達、家族などあらゆるところから得ることができるだろう。
それだけ、世界が小さくなってきたということだ。

しかし、いくら情報が手に入り、商品を宅配で買うことができても、修理やメンテナンスなどのアフターサービスはリアルでないとダメだ。
私のいる真鶴には周りに自転車屋さんがない。前に電動自転車を買うかどうか迷っていると話をしたことがあったが、結局、買うことに決めた。しかしどこで買えばいいのかと悩んだ。小田原の自転車屋さんではパンクした時に自分では持っていけない。出張修理というのがあるのかもわからない。結局修理できなければ、買うことはできないと思った。
それで、ネット検索をしたところ、ようやく、伊東市の出張自転車修理店を発見することができた。このお店はネットでも検索エンジンに見つかりにくいサイトだったが、インスタグラムの#自転車修理でヒットできた。
https://nagisacycle.jimdofree.com/
ちなみに私の家までだと出張費が3000円からとなっている。でもこれは心強い。一気に自転車を買う気モードになったが、今度はお目当ての自転車が売り切れで入荷未定とこのことで、電動自転車は当分お預けかと意気消沈である。
このように、アフターサービスが最後の購買決定の決め手になる可能性もある。


今後、コロナの影響で都心から郊外での暮らしにシフトする若い世代が増えると予想される。そういう中で、顧客の購買決定プロセス(カスタマージャーニー)を最後まで検討しないと、購買には繋がらないし、それをフォローするためのネットワーク作りは大切である。最終的に消費者には自分の商品、サービスを宣伝してもらうことが究極の目標だ。
私はネット専門の自転車販売業者はこのアフターサービスについて少し、爪が甘いように感じる。
例えば、サイマという自転車通販サイト、全国NO1との触れ込みだが、アフターサービスはいやはや、ショボイという他ない。
https://cyclemarket.jp/?&utm_source=google&utm_medium=cpc&utm_campaign=00_CAMP&gclid=Cj0KCQjwuJz3BRDTARIsAMg-HxVT9kFPnZka4JnlwD9_BS3_4MbTEbfKRYgmJNkYg4wLhYsfnoBpf8YaAvIeEALw_wcB&gclsrc=aw.ds
都心であれば、自転車屋さんも多いので、ネット通販の強みは郊外、地方ではないかと。なのにアフターサービスには力を入れていない。もし伊東市のなぎさサイクルとサイマが提携していれば、絶対にサイマで買うことだろう。

でも今は、スマートフォンがあれば、なんとか探せるところまできている。でも時間はもったいない。そこをうまく取り入れる企業がこれからの顧客の心を掴むのではないかと考えている。

ちなみに私の欲しい電動自転車はブリヂストンのTB1である。これは確かにYouTube見ても絶対買いだ。売り切れてるのは納得。
https://www.bscycle.co.jp/TB1e/

シリーズ#15 コトラーのリテール4.0を斬る

今こそ小売業は変革する時だ!

今日は最後、10番目の原則である「勇敢であれ」について考える。
本書では「小売業は、自社のビジネスに未来がないかもしれないことを認める勇気を持たなくてはいけない。そして、変化を受け入れなくてはならない」と述べている。そして、これまでの時間のかかる変化対応ではなく、顧客と話し合いながら進めていくリーン方式をとって、改革を進めなければ生き残れないと説いている。


まさしく、今のコロナショックでは小売業全体が大きなダメージを受けている。特に飲食業、旅行業、エンターテイメント業は存続の危機となっている。小売業でも百貨店、ファッション専門店などは存続の危機であろう。

本書では、これまで時代の流れに適合できずに破綻した企業の紹介をしている。写真フィルムにこだわりすぎたコダック、自らの携帯電話に固執したブラックベリー、ノキアなどである。
また米国でレンタルビデオの最大手であったブロックバスターがネットフリックスに負けてしまったのも記憶に新しい。

今だと、ZOOMなどのビデオ会議の普及により、多くの企業がオフィスを縮小したり、事実上なくしたりしている。間違いなく、東京都心でのオフィス需要はこれまでとは違った形になるだろう。都心のオフィスが減れば、飲食店には大打撃だ。今回のコロナによる社会的な現象(ワーク@ホーム)とデジタルの進歩(ビデオ会議システム)により、これまでの需要がなくなり、新しい需要が別の場所で生まれてくるのである。

こういう時こそ、小売業は勇気を持って、新しいことに挑戦すべきだとコトラーは説いている。
日銭商売で、毎日対前年の数字とにらめっこしながら仕事をする小売業の人たちは、どうしても考えが短期的になりがちだ。しかし、今の状況は短期的なことを考えていても、解決策は生まれない。
今の百貨店はブロックバスターのようなものだ。まだ、少しの間は売上は稼げるだろうが、これまでの商売のやり方では、必ずネットフリックスのような新しいネット企業に負けてしまう。彼らはまだ小さい企業だからこそ、小回りが利く。だから顧客の目線で商品開発、サービス開発を進めることが可能だ。しかし伝統的大企業はこれまでのビジネス習慣、設備、サービス、品揃え、人材といった制約の中で改革をしなければいけない。しかし制約をクリアできる改革はないのが現実だ。

以前のソニーが本体の家電で苦戦していた時に、本体の収益を支えてのがゲーム事業であった。そういう本体とは一見すると畑違いの事業へのトライを行うことで、コロナショックのような社会の構造そのものが変わろうとしている時に救世主となるのである。

新規事業の開発には既存の技術、ノウハウが生かせるものをベースに広げていくのが王道であると言われる。しかし、今の小売業でこういうやり方で生き延びれるのだろうか。
江戸時代から明治へと時代が変わる時に、活躍した坂本龍馬や西郷隆盛のような、自らの命と引き換えにしてでも、国を憂いて、体を張って改革を進めるリーダーが今求められる。

必ず、解決策はある。ホテル業界でもオリンピックを目標に多くの建設ラッシュが続いてきた。しかしホテルはもういらないのだろうか。インバウンドには多すぎるかもしれないが、ターゲットを変えればマーケットはある。
インバウンドでもそうだ。確かにこれまでのような形で、団体旅行客が来ることは当分ない。だが、必ずある程度の数は来るのだ。それに向けた戦略をとり、そのターゲットに選んでもらえる店づくりにすれば勝てる。なぜなら、まだ誰もしていないから。最初にやれば勝ちだ。
耐えている時間はない。動くしかないのだ。

小売業で問題の答えを探すには一つ道はしかない。顧客に聞くことだ。株主、社外取締役、投資家などの声を一番に聞いてもダメなことは明らかだが、これまでそういう風潮になっていたようにも思える。

私の好きな言葉はサムウオルトンが残したこの言葉だ。

Retail is Detail

お客様に寄り添うことで小売業は成り立っている。

ユニクロからワークマン、デカトロンの時代へ           

更なる低価格&高品質&高デザインの登場

最近、自粛生活でジョギングを再開した。股関節に問題があるのでなかなか普通には走れないのだが、スロージョギングを心掛けている。
それで久しぶりにジョギングウエアを買おうと思ったが、近くにユニクロも何もないので、シンガポールでよく行っていたデカトロンの通販サイトをチェックすることにした。
https://www.decathlon.co.jp/
デカトロンはフランス発のスポーツグッズ全般の小売店でユニクロと同じ製造型小売業だ。ほとんどのスポーツに対応しており、ウエアからギアまでありとあらゆるものが揃う。私はシンガポールではヨガウエアをよく買っていたが、妻はジョギングウエアや小物を買っていた。どうもシンガポールではジョガーの多くがデカトロンのウエアを着ているようだ。
その理由は安い、品質が良い、デザインがクールということだ。
確かにユニクロに比べると品質では劣るところがあるようだが、ユニクロにはないヨーロッパらしいデザインの良さと小物の充実が強みだ。
私も以前は百貨店ブランドを買っていたが、例えばヨガウエア、グッズでもルルレモンの4分の1の値段で買えるし、デザインもルルレモンとそんなに変わらない。品質も変わらない。
私はウインドサーフィンも趣味だが、サーフィンのウエアもデカトロンでは充実している。夏のラッシュガード(紫外線を保護する水着みたいなもの)も上下でセールプライスで3000円で買える。これもデザインもなかなか良い。なんとボードまで売っている。

ユニクロに欠けているのはデザイン性だろう。おそらく、グローバルで展開し、多くの顧客に対応するためにはデザインはどうしても無難でシンプルなものになってしまう。確かにゴルフウエアでは私の経験ではデカトロンよりもユニクロのゴルフパンツのほうが優れていると感じる。しかし総合的にはデカトロンに負けていると感じる。
実際に私が最近、スポーツ関連で買うのは間違いなくデカトロンをチェックしてからになる。百貨店のブランド商品を買うことはない。なぜならブランド商品を買わないといけない理由がないからだ。

これと同じことを最近ワークマンで感じた。これまでワークマンは労働者のためのウエアを販売しているお店だと思ってあまり気にもかけていなかった。しかし、最近、たまたま仕立て船で魚釣りをしたときに、釣りの師匠が着ていた魚釣り用の防水レインパンツがいいなあと思っていたら、ワークマンで3000円前後で売ってますよと言われて、初めてワークマンのサイトを見てびっくりした。
https://workman.jp/shop/default.aspx
全く労働者の店ではなかった。今では屋外作業の労働者ための高品質で且つデザインも優れた商品がたくさん出ている。しかも安い。
釣りの師匠が着ていたレインパンツは魚釣りだけでなく、庭での草むしりなどの作業にも使えそうだ。
また、サイトをチェックしていると、自転車通勤している人にはワークマンのレインウエアは優れもので人気のようだ。またゴルフのレインウエアにも最適のようで、ブランドのレインウエアは最低3-5万はするが、ワークマンだと5000円しない。それが安かろう悪かろうではない。


何となく、ユニクロが最初にフリースで一世を風靡した時を思い出いだした。
ワークマンのダウンジャケットも人気のようだ。

このように百貨店ブランドを買っていた人が、ユニクロでいいやと思いだしたのが10年前。そして今はユニクロで買っていた人が、デカトロン、ワークマンのほうが良いじゃないと思い始めているのが最近のように思える。特にコロナで消費マインドが収縮している中で、安くてデザイン、品質も良いものが買えるところに大きく動き始めているように感じる。

これからのアフターコロナを考えると、屋外で郊外でスポーツやアクティビティを楽しむ機会が増える。その時に何を着るのか、使うのかはやはり高品質、低価格は必須条件であろう。そこにデザイン性、機能性がどこまで加味されているのかではないだろうか。


確かにパタゴニアのような環境問題に積極的に取り組んでいる企業を支援する動きも出てくるだろう。そこでは高価格でも消費者は納得する。環境問題こそがこれからの高級ブランドの生き残る道かもしれない。なぜならデザイン性では差別化はできないことは明らかだ。

これからは低価格、高品質、高デザイン、高機能性のデカトロンか、環境保護などの社会性、高品質、高機能性、中高級価格のパタゴニアに2極化するだろう。
多くのブランドは戦略転換を急がないと。時間はない。

シリーズ#14 コトラーのリテール4.0を斬る

大胆な提携、統合がこれからのキーポイント

今日は9つ目の原則「エクスポネンシャルであれ」について考える。
このエクスポネンシャルというのは、これまでテクノロジーが1の次が2、2の次が3……と人間の経験則や直感に基づいてリニア(直線的)に成長していくと思われていたことに反し、1の次は2、2の次が、4の次が8という風に急速に成長していくことを表す。
この考えはシリコンバレーで急成長を続けてきた、アマゾン、グーグル、アップル、フェイスブック、Uberなどの企業が急激に成長したことを受けて、今までの伝統的な企業のような堅実な成長では今のデジタル時代にはついていけないことを意味している。

小売業でもアマゾンがその代表例の企業であるが、これからの企業はテクノロジーとサービスと製品の最適ミックスをどう消費者に提供できるかが問われている。
そのための取り組みをこれまでのように、全て自社で開発して、完結させるのは無理な時代になっているのだ。他の企業との取り組みを加速させることでしか、今の消費者を満足させることはできないと本書では説いている。
これらの提携にはこれまでのような自社物流システムをヤマト運輸に任せるなどのアウトソーシングから、レストランが近距離の宅配サービスのみに特化した企業と組むことで、これまでにできなかったお弁当のデリバリーを実現するなど様々な提携を行うことが大事である。

今のコロナショックは、大胆な企業提携やイノベーションが求められている。
先日、百貨店のお中元がスタートしたというニュースを見ていたが、店頭での混雑緩和とオンライン受注の強化というこれまでの路線からジャンプしているとは思えない取り組みに感じた。もっとこれまでの固定概念に囚われない取り組みが必要であろう。

例えば今、必要なのは各百貨店のお中元の商品が比較検討できるサイト(exホテル選びのトリバゴ)が顧客にはありがたいのではないだろうか。各百貨店でのお中元の商品は、価格、配送サービスなどではあまり差別化ができていない。商品でも売れ筋のビール、ドリンク、素麺などはほぼ同じである。だから、各百貨店は何とか顧客を囲い込むことに必死になる。他の百貨店と組むなどとは全く考えられない。しかし、よく考えれば、お中元における百貨店の強敵はもはや他の百貨店ではなく、アマゾン、楽天、ジャパネットタカタなのではないだろうか。今はふるさと納税もライバルであろう。
私ならアマゾンなどと組んで、お中元だけでなくEコマース戦略そのものを改革するだろう。

そう考えると、本書でも取り上げているが、ライバル同士がタッグを組むことで新しいマーケットの開拓にも乗り出せるのではないか。全ての百貨店のお中元商品を見比べて、そしてワンクリックで買えるサイトがあれば、これまでの消費者とは違うマーケットの開拓になりそうだ。

またこの原則では、小売業におけるオープンイノベーションについての重要性も述べられている。
前述のお中元商戦でもそうだが、大手小売業は全て対前年比で予算を立てて、恐らく10%前後のプラスを目標に戦略を立てる。このやり方では決してイノベーションは起きない。
イノベーションを起こすには、前年の3倍売るためにどうするかを考えることをしなくてはいけない。そのためにはこれまでの考えを捨てて、新しい視点を取り入れることが大切だが、なかなかそれができない。大企業になればなるほど、自社の中で若手を起用してプロジェクトで考えようとする。

ここで、危険なのは若手=新しい発想の持ち主と考えることである。若手を集めても、彼らが伸び伸びと新しい発想を生み出せる環境を用意し、失敗を許す雰囲気を経営層が持たなければいけない。が、現実はその逆であり、すぐに結果を求めすぎるのが一般的だ。
本書でも出てくるリーンスタートアップについて、別の機会に述べることにするが、なかなか参考書通りには行かないのが現実だ。

私は小売業に必要なのは若手のプロジェクトチームではなく、異世代混合によるプロジェクトではないかと感じる。
コンサルタントを採用するのもいいが、結局は表面的なケースになることが私の経験からも多かった。
それよりも、社内でいろんな部署の世代の異なる人材を集めて、ファシリテーターを使いながら、これまでの戦略を見直すことは一つの方法になる。この時に重要なのはファシリテーターの力量であろう。

今、私が参加している、異世代交流会(ジェネリス)でもファシリテーターの重要性を感じている。一つのテーマ、プロジェクトをどういろんな人の声を集めながらも、一つの方向に持っていくのかはもっとも難しい。
またメンバーをどう選定するかも大事なところだ。異世代になると、どうしてもシニアは若手を上から目線で説教的に話してしまう。若手の自由な発想をぶった切ってしまう固定概念の塊のような人は排除しないといけない。
こういうことは他社との新規事業の共同開発でも同じことをよく経験した。

どちらにしても、コロナショックで時代は10年かかる改革を10ヶ月で進めないといけない状況だ。
今、必要なのは、これまでの固定概念をぶっ壊す力とそれを全く新しいビジネスモデルで作り上げる柔らかい頭脳である。時間はあまりないのだ。

私の友人の経営する飲食店では、すでに新しい取り組みを進めている。他のレストランと共同でテーマを作り、他のお店をラリー形式で回ってもらう取り組みだ。これは顧客にも新しい体験になる。同じテーマをどうそれぞれのレストランが料理するのかは楽しみである。またお店には他店の馴染み客が新規顧客になる可能性大だ。そして対取引先には共同仕入れによるバイイングパワーを高めて、仕入れコストを下げれる。まさに三方よしの戦略だ。
しかし、これもリテール4.0から見ると、少し物足りない。
なぜなら、デジタルの力が生かされていない。この顧客をいかにコミュニティ化し、その中からいろんな次のアイデアを集め、そして、そのパワーで新しい参加レストランを増やすことに繋がるのである。
デジタル、特にスマホの力なしには持続可能性の高い企画はありえないだろう。
近いうちに飲食店4.0を提案したいと思っているところだ。

シリーズ#13 コトラーのリテール4.0を斬る

小売店舗はリアルでなきゃダメなことをもっと追求しないと

今日は第8の原則「バウンドレスであれ」について考える。
バウンドレスであれとは、小売業は壁で仕切られ、1カ所に収まっているリアル店舗であるという意識を決定的に超越せよ、(P138)という意味だ。お店を起点にそれまでお店だけで完結していた、注文、試着、お渡しなどを自宅や通勤途中の場所などを使って顧客の都合の良い時間、場所で提供しようというサービスである。
ここでも、顧客とはスマートフォンをメインに常に繋がっていて、商品選びから試着、購買決定、返品などを店舗でな区てもできるようにするということだ。

この本でもでてくるザッポスという靴の通販サイトはそのカスタマーサービスで有名だ。ザッポスの奇跡という本まで出ている。
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4331515052?ie=UTF8&tag=usbizinc-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4331515052

この会社は2009年にアマゾンに買収されて、今はアマゾンの傘下だが、そのサービスは前と変わっていない。通販サイトは普通、コールセンターでの問合せは受け付けない。なぜなら、人的コストが高くなるからだ。アマゾン本体ではコールセンターの電話番号はわからないようにしていて、探すのは一苦労だ。

しかしザッポスの場合、積極的にコールセンターに電話をするように顧客に進めている。電話番号もすぐにわかる場所に表示されている。ザッポスでは、通販サイトでありながら、人的な接客相談サービスを充実することで顧客との繋がりを深めており、ロイヤルカスターづくりを行うことで、一人あたりの購買額をあげているのである。

ザッポスの強みである、接客サービスこそリアル店舗の強みであるが、それを通販サイトで実現しているのがザッポスだ。

ということは、リアル店舗はこの逆の戦略を取ればいいのだ。通販サイトが得意なことをリアル店舗でやってしまう。
例えば、リアル店舗なのに、品揃えはサイトと同じだけ多くの種類が用意されている。そして、それを店頭で自由に見て、試着、試用することができるようにするのだ。こサービスには事前にネット予約してもらうことが必要だが、それが可能になれば、顧客は必ず店舗に行きたくなる。
また店頭で見て、購買決定しても持ち帰らずに配送をすぐにしかも無料でしてくれるサービスができれば、店舗に仕事中でも寄リたくなる。

つまりネット業者がリアルの利点を取り入れるとコスト高になり、収益が下がると考えてしまうのが普通だが、それを可能にするビジネスモデルを構築すればいいのである。ザッポスはそれを実現している。
だから、リアル店舗中心の小売業はもっと、顧客の立場で考えて、リアル店舗に不満を持っていることをネット企業を参考にしながら、見つけて、それを解決してあげればいいのである。きっとそれはコスト増になるサービス、仕組みになるだろう。しかしそれを可能にするためのビジネスモデル変革を企業全体で進めるべきなのである。
言うは易し行うは難しだが、ザッポスでも最初はそうだったはずだ。

そしてもっとも大切なことは、いかにリアル店舗はリアルでしか、満足できないことを顧客にアピールするかである。

今日、私は久しぶりにお茶のお稽古に行ってきた。
お茶のお稽古はやはりお茶室のある環境、雰囲気が大事だと感じた。風炉から時々飛び散る火花がなんとも言えない音を醸し出し、心が落ち着いていくのを感じる。お茶のお稽古は動作の作法を学ぶことも大事だが、それよりも大事なのは、全ての動作を丁寧に行い、扱う茶器を大事に扱い、お茶をお出しするお客様を大切にすると言う全体の流れを学ぶことである。
これはオンラインでは絶対に学べることはできない。今日もお稽古をした後、なんとも言えない清々しい気持ちになった。これこそ、リアルでしか味わえないものである。


同じことがヨガの教室でもあると感じる。私が通っているシンガポールのヨガクラスではヨガの前後に必ず瞑想を行う。瞑想を全員で行うことに一体感を感じることができる。そしてヨガになってからも、先生は一人一人のポーズの細かな指導があり、そのちょっとした修正が大切だなといつも感じる。これもリアルでしか味わえないことである。

今、オンラインセミナーが盛況だ。しかしお茶では作法の手順はオンラインで勉強できても、精神的な修養はオンラインでは絶対にできない。とするならば、お茶のお稽古場では、作法よりもお茶の精神と作法がどう関わっているのかをその一人一人の作法の中で説いていくことが大切であろう。お茶のお稽古場でしかできないことと、オンラインでもできることを明確に分けることが必要だ。まあ、お茶の世界でオンライン授業はなかなか進んでいないのが現実だが、これもこのコロナを機会に進んでいくことを期待したい。


一般の小売業では店舗でしかできないことをまず顧客の目線で、自分たちで確かめることが必要ではないだろうか。
お茶、ヨガなどのサービスではなく、物販であっても必ず店舗でしか満足できないことがあるはずだ。
簡単にできることは馴染みのお客様に「なぜ、うちのお店に来たくなるのか」を尋ねることから始めるのが良いだろう。
それこそが店舗のコアコンピタンスなのである。
お茶のお稽古場のようにお店の雰囲気を楽しみたいというお客様がいるかもしれないし、有名な絵画、美術品があれば、それを見に来る人もいるだろう。販売員との会話を楽しみに来る人もいるが、これはオンラインで代用できるかもしれない。

バウンドレスであれとは、店舗とか、オンラインとかのチャネルの問題ではなく、顧客にとってなぜ、そのお店で買いたいのかの理由を探しだし、それを強めるためにどうすればいいのかを、リアルとネットを使いながら考えるということだ。

だから、そんなに難しい話ではない。オンライン、オフラインはその後の手段であり、大切なのはお店に来る目的を探し出すことだ。
あなたのお店はスタバのようなコミュ二ティサロンとお客様は捉えているかもしれない。

シリーズ#12 コトラーのリテール4.0を斬る

これからの小売業は販売しないお店が増えるかもしれない

今日は7つ目の原則「人間的であれ」について考える。
ここではデジタル化すればするほど、人間的なファクターが競争優位になると述べている。あらゆるバリューチェーンにおいて、再び人間を中心にすることの大切さを説いている。
そして、3つのS、Service(サービス)、Sociality(社会性)、Sustainability(持続可能性)が重要であると。

一つ目のサービスはまさしく、人間的な心のこもった接客と専門性の高い知識とサービスの提供だ。前回にも話したが、以前の東急ハンズの販売員はプロの専門家であった。本書にも出てくるが、パタゴニアの販売員は山のプロであルと同時に環境をいかに守るかのプロでもある。アップルストアの販売員はアップル製品にまつわることなら色々教えてくれる。決して販売を目的に接客しているようには感じられない。以前に話した、売らんかなの姿勢がみられない販売スタイルである。だから売れるのである。

2つ目の社会性とは社会として必要とされる店舗であるかどうかである。本書では営業時間以外でも開放されているアップルストアのイベントスペースを例にあげているが、私の経験で言えば、東日本大震災の時に多くの百貨店が緊急避難場所として、売り場を一般客に開放することも社会性の一面だと言える。昔、経済学の授業で百貨店は準公共財であると学んだ記憶があるが、今でもその定義に該当するかは?であるが。。
地域の中でどういう社会的役割を持つのかが大事である。

3番目の持続可能性はまさしく、これからの時代に必要なものである。今のコロナウイルスによって大きく環境が変化している。また同時に地球温暖化による自然災害がこのコロナ予防と相まって、さらに私たちの生活行動を変容させている。この変化にどう小売業として対応していくのかが問われている。例えば、コロナ対策として企業としてどこまで対応しているのか、医療従事者への支援はどうしているのかは顧客には気になるところだ。またフードロスの問題は大きく取り上げられている。賞味期限切れの商品は廃棄することは今では悪であるが、それをどう解決するかはなかなか一企業では解決できない。こういう取り組みを率先して行う企業を応援したくなるのが今の社会、消費者であろう。

このように企業はデジタル化により、さらに効率的、効果的なビジネスモデルを構築する必要があるが、対顧客に対してはいかに人間的な暖かさと温もり、そして地球と生活を守りながらも、人間らしい生活を楽しむためのお手伝いをすることが求められるのである。
人間力のある企業であるかがキーワードになる。

その視点で考えると、これからのリアル店舗というのは販売をメインに考えてはいけないのかもしれない。
つまり、リアル店舗は顧客に体験をしてもらい、同じ価値観を共有するスペースなのかもしれない。
アップルストアはこのコンセプトに近いものかもしれない。サムソンなどのIT企業でも販売を目的にしない体験店舗を出している。また家電企業、自動車会社のショールームというのは昔からあるが、これこそ顧客への情報提供&情報収集の場である。
メーカーであれば、店舗で売上が上がらなくても、ネットや他の場所で売れるのではあれば問題ない。アメリカでは店舗はショールームで実際に目で見て、試着をするためのスペースと位置付けているアパレルベンチャーも増えている。
このように、小売業はこれまでの店舗では売上を上げないといけないという考えを捨てて、メーカーのショールームを家賃収入として導入していくことを加速すべきではないだろうか。ネット企業がリアル店舗を相次いで構えているのもうなづける。
当然、このビジネスモデルはリアル店舗だけで見ると、今よりも収益効率は下がる。しかしそれに耐えうる企業構造に変えればいいのである。

顧客が求めているのは、ネットでは出来ない体験である。また、専門的な知識を持った販売員との人間的なコミュニケーションである。そうすると小売店の定義を変えないといけないかもしれない。
これまでの、「小売店は商品、サービスに付加価値(高度な接客、専門的アドバイス)を付けて販売し収益をあげる」から「小売店は顧客に店舗でしか体験出来ないもの(試着、試飲、肌触り、使いごごち、他の使い方など)を人間でしか出来ない付加価値(温かみ、温もり、笑顔)を付けて、顧客と一緒に価値観を共有する場所」になるかもしれない。
まさに売らんかなのイメージの全くない店舗こそがこれからの小売店舗だ。

今までの売上を業績指標としてきた小売業は全く考えを変えないと顧客体験を満足させることは出来ないだろう。


私が若い頃、紳士服の担当であった時、シーズンごとにアパレルメーカーの展示会に出かけた。展示会での楽しみはファッションショーであった。そのシーズンごとのデザイナーのテーマや考え方が伝わってきた。このファッションショーは限られた人しか見ることができない貴重なものであった。
このファッションショーをコンパクトにしたものを、昔の百貨店では売り場でイベントで開催したりしていた。あの当時は人気があったものだ。
今思えば、あの時代はファッションショーは、今のアップルストアでのイベント、講習会かもしれない。
ワクワク、ドキドキすることは時代と共に変わる。その動きについていけない企業は淘汰される。当たり前の話である。


店舗で売れなくても、儲かる仕組み作りをいかに構築するかが大事であろう。

シリーズ#11 コトラーのリテール4.0を斬る

一芸に秀でることがこれからのポイント

今日は6番目の原則「キュレーターであれ」について考える。
昨日、私は全国レベルで展開している自転車販売の専門店「サイクルベースあさひ小田原店」に行ってきた。
実は今、電動自転車を買おうかどうか迷っている。今住んでいる家は高台で、駅までは歩くと20分以上かかるところにある。これから東京での仕事を再開する上で、駅までできれば自転車で通勤したいと考えている。しかしかなりの急勾配のため、普通の自転車では登れそうな気がしない。またバイクというオプションもあるが、大抵東京に行くと、夜は誰かと飲んでしまうので、バイクでは飲酒運転になるため無理だ。駅からタクシーに乗ればいいではないかとも考えるが、なかなかタクシーの台数が少なくて、深夜はかなり待つことになる。では歩けば良いではないかと。しかし帰り道こそ、勾配がキツく歩くと30分近くかかる。深夜に飲んだ状態で歩くには厳しい。
また週末(今は毎日が週末みたいなもんだが)には真鶴半島をサイクリングもしてみたい最近思ったりすると、やはり自転車で電動しか選択肢がないかと。
しかし、家でネットで調べても、自分には何を買えばいいのか分からず、値段も高いので、それならばと家から車で20分かけてサイクルベースあさひに行ったわけだ。

しかし、私は落胆して帰ることになる。まず、品揃えはがあまりにも中途半端であった。確かに店頭にある自転車は試乗もできるのだが、できるのは限られておりその中から選ぶのが適切とはとても思えなかった。また販売員の男性は若くで丁寧だが、こちらの話をあまり理解しようとせずに、展示商品の商品説明に終始するだけであった。私が使う用途のことやメーカー別の性能の違いを尋ねても曖昧であり、最後に私が真鶴に住んでるからねというと、「すいません、真鶴ってどこですか?私この辺りのことよく分からないんですと」。もうこれで帰ろうと思い、家路に着いたのである。
多分、今後サイクルベースあさひで買うことはないだろう。

小売業というのはこういうものである。そこでの顧客体験が不満足ではなく、不満に思うと、余程の理由がない限りそのお店には二度と行かないものである。そういう意味では立地に恵まれていると、一度くらい嫌な思いしても、しょうがないとまたその店で買ってしまうものだ。だから小売は立地が全てと言われるのかもしれない。

さて、今日のキュレーターであれという意味は、消費者の満足を生み出すためには、今以上に小売業は強みである分野を持ち、自分たちが相手にするお客様を明確にして、その方にどのような商品、サービスをどのように提供するのかを明確にしないといけないという、至極当たり前の話である。
本書でも「何かに特化した小さな店舗に存在感があった。リテールの起源へと一種の回帰がみられる」と述べている。

消費者はデジタルの力で圧倒的は情報収集能力を持つことになった。しかし、この情報収集で集めたものから選択できるだけの力は消費者にはない。ましてや10万円を超える商品になると失敗はできないと思う。安いものならアマゾンで買って失敗してもしょうがないなとなるが、そうはいかない。
私の電動自転車探索もネットサーフィンで相当数のものになり、どんどん候補は増えるのだが、比較できなくなり、最後には混乱してきて、専門家に聞かないとまずいと思うようになったのである。しかし、自分にぴったりの専門家がいる場所は見つけにくいのが実状ではないだろうか。


キュレーターとは美術館にいる学芸員のことである。その美術館での催事などのテーマから実際の展示作品のチョイスを行うのであり、まさに小売店でいうバイヤーである。
バイヤーには個性が必要である。確かに世の中の動きを見て、消費者の嗜好に合わせて商品を選んでいくが、流行だけを追うと、他店と同じような品揃えとなり差別化ができない。しかし、バイヤーの好みで品揃えすると嗜好が偏り、売れない品揃えになってしまう。
どういう個性を持った品揃えをするのかを明確にお店が持たなければいけない時代になったのである。

しかし、昔からこの話は何回もかされてきたことだ。
ポイントはその品揃えとサービスが一体化しているかどうかである。
お店の個性と消費者の個性がマッチしても、その中から一つに選ぶ作業、そしてそれが正しかったかを確認し、また修正していくサービスがなければ、電動自転車のような専門品(比較的金額の高い商品で比較検討が必要な商品群をいう)では売上にはつながらない。
電動自転車でも実際に試乗して、気に入ったものを見つけて、価格.comで買えばコスト的には良いが、そのあとのアフターサービス(パンク修理など)を考えると、簡単には決めづらい。
これからの小売業は規模の大小にかかわらず、個性をより出していくことが求められる。特に専門品を扱う業種(専門店、百貨店、ショッピングセンター)では大切になる。


例えば、家電販売店でもノジマは販売員のサービスを差別化にしようとしている。その戦略は間違っていない。しかし、消費者にはその差がわかりにくい。私も近くにヤマダ電機とノジマがあるので両店を行き来するが、その販売員のサービスレベルの差が分からない。その理由はノジマの販売員はオールマイティを求められているからだ。専門家はいない。
例えば、ノジマで電動自転車を販売していたとしても、自転車のプロはいないだろう。私の今回のようないろんな用途で使えて、しかもアフターサービスなどを含めた対応はできないと感じる。
これからは扱う商品ごとにプロ、キュレーターと呼べる販売員がいなければ、専門品の販売は難しいだろう。
ある程度の知識、情報はネットで集めることができる時代だからだ。
昔の東急ハンズはそういうプロの販売員の集まりだった。しかしハンズの失敗は全てのカテゴリー、つまり最寄ひん、買い回り品など単価の安いカテゴリーを含めて全てで対応することで費用対効果が苦しくなって今の状態になっているのではないか。東急ハンズの店作りは専門店仕様であり、高コストになっている。郊外のDIY専門店は比較的その専門性を維持しているように感じる。

話を戻すと、専門家として、電動自転車のバッテリーの各社ごとの違いや、色々な情報と同時に、サイクリングを楽しむための装備とか、楽しみ方を総合的に相談に乗ってくれないと私は満足できないのである。
おそらく私のいくべき店は他にあるのだろう。しかしそれがどこかが分からないのである。ネットでそのお店を見つけるまでには至っていない。
このように今の時代、ニッチマーケットでも十分に商売は成り立つ。ネットを使えば商圏範囲は広がるからだ。しかし、それを顧客に見つけてもらうように、自分の店の特徴を出して、ネットで見つけてもらえるようにしないといけない。そうすればおのずと顧客は見つけてくれるのである。だからデジタルは大事なのだ。

しかし最後はその店主、もしくは販売員の個性、人間力に関わってくるのだ。なんでも自転車のことを相談できる人を望んでいる。遠くに店があっても、修理の時はスカイプで初期対応してくれて、実際の運搬は別にオプションを用意してくれるなど方法はある。


だとすると、これからの時代は私たちは一人一人、自分の個性を自覚して、人より秀でたものを自分の強みとて伸ばすことが大切であろう。それがいくらマイナーでも構わない。好きこそ物の上手だ!

なんでも売ってますというお店に将来がないのと同じように、なんでも出来ますという人間はもう必要がないのかもしれない。それよりもこれは人には負けないというものをしっかりと持つこと、それをきちんと発信することで次の人生が開けるかもしれない。

デジタル社会におけるSNS被害に思う

私は自分では本来、悲観的な人間だと思っている。大阪弁でいう”あかんたれ”だ。

しかし回りからは常にアグレッシブに生きているように思われがちだ。それを自分としてはいつも励みにしながら、アグレッシブに生きるためのパワーにしている。そういうパワーこそ、友人や家族などから得るものだと思う。
それが今のデジタル社会では直接会ってもらうのではなく、SNSやビデオチャットなどから得る時間が増えてきた。
しかしこれも匿名ではなく、実名でのやり取りだからこそパワーをもらえるのである。

最近起きた誹謗中傷でプロレスラーの女性が命を落とした事件は本当に悲しいし、悲惨な事件である。
この匿名のSNSによる攻撃は今コロナの期間では、自粛警察ともいわれて流行している。これも酷い。
デジタル社会の一つの負の側面はこの匿名による、情報発信の自由度である。
発信する側にすると、軽い気持ちで投稿しているのだと思う。しかしその人間も受け手としてそういうSNSを自分が受け取る側に立つといかにその行為が酷いものであるかを経験するだろう。しかしSNSで誹謗中傷する人間は決して自分を表に出すことはない。なぜなら、彼らこそ弱い人間なのだから。

相手を思いやる気持ち、相手の立場にたって、物事を考えることが出来れば、おのずと行動は変わってくる。
しかしデジタル社会ではこの簡単なことが、どうも匿名による自由な発信によってゆがめられているような気がする。何とか政府は早く手を打ってほしい。

マーケティングの世界でも顧客第一主義が基本である。相手の立場に立ってこそ、相手の気持ちがわかるし、それをもとに商売をするのである。

私のこのブログでも同じである。デジタル社会だからこそ、こうして自分の考えを自由に多くの皆さんと共有し、また時にはご意見も頂ける。こういうインタラクションの場こそがSNSであるべきだ。そのためには匿名ではなく、個人としてしっかりと名前を出して発言をすることは大切ではないだろうか。

また私はこういうブログでは誹謗中傷や批判はあまりすべきではないと考える。みんな人間は弱い生き物だ。その弱いところばかりを見るのではなく、良いところを見るようにしていきたい。これはマネジメントにおける人の指導法もそうだし、コーチングの基本でもある。
常に前向きに、毎日が昨日よりも良くなるように考えながら生きていける自分でありたいと。




シリーズ#10 コトラーのリテール4.0を斬る

カスタマイゼーションとパーソナライゼーションの違い

今日は第5原則「パーソナルであれ」について考える。
コトラーは言う。小売業者はこれまでのOne to Manyであるマスマーケットのアプローチから、可能な限りパーソナライズされたソリューションの提案、One to One への戦略変更を求められていると。

またこれまでカスタマイゼーションとパーソナライズゼーションは同じように扱われてきたが、実は本質的な違いがあると。カスタマイズと言うのは一定の範囲の中から、顧客が選ぶことができ、自分にあった製品、サービスを受けることだ。つまり、スーツでいえば、イージーオーダーのスーツである。一定の範囲で好きな生地を選び、好きなシルエットを選び、ボタンも好きなのが選べる。そして、自分のサイズに一番近い体型のパターンを修正するのが、カスタマイゼーションだ。
一方でパーソナライゼーションは消費者に関する情報(過去の購買実績、好みのスタイルなどの分析)の活用によって行われる。期待を先回りして、高い確率で満足が得られるソリューションの提案を行うのである。
いわば、フルオーダーのスーツの注文である。顧客の持つイメージを元に、生地、スタイル、装飾品などをトータルで提案することがパーソナライゼーションである。

したがって、カスタマイゼーションは消費者の選択に対するリアクション的な行動であり、パーソナライゼーションは消費者に感動と喜びを与えるためのプロアクティブ的な行動である。

本書ではカスタマイゼーションの例としてNIKEのシューズのカスタムサービスの話が出ている。車でも今はホームページで好きなボディカラー、オプション装備品、シートの形状など色々なカスタム化が可能になっている。
商品のカスタム化だけでなく、サービスでも美容室では、カット、パーマと言ったこれまでのものから、ネイル、ヘッドスパなどこれまでのヘアーカットサービスが癒しのサービスへと変わってきている。これもカスタマイゼーションの一つであろう。ではこれからのパーソナライゼーションとは何か。
本書ではデジタル技術をベースにしたパーソナル化を提言している。つまり、顧客にはあくまでも人間がアプローチしているかのように見せかけながらも。個人のデータを集め、それを分析し、一人一人の個性に合わせた提案をすることが求められているのだと。
そして、その提案は顧客のスマホに向けて、店外から店内にいる時でも常に顧客とインタラクティブにコミュニケーションしながら作り上げて行くものだと。つまり顧客とのコミュニティ作りによる、新たな価値創造を商品だけでなく、店内での体験を含めて総合的に行っていくと言うことである。
しかし、これは言うは易く行うは難しである。
本書ではセフォラやNIKE by メルローズの例を取り上げているが、私にはあまりピンと来なかった。

私が考えるパーソナル化とは、先ほどのオーダースーツの例でいうと、これまで最低でも15万近くはしていた、フルオーダーのスーツをイージーオーダー並の10万円以下、79000円でできるような仕組みをデジタルを使ってできるようにすることではないかと。しかも、スマホの中にはもっと色々なオプションが用意されているのだ。
これまでは熟練の販売員と技術者がいて初めて成立した、フルオーダーをデジタル化し、情報の分析もAIでこなすことで、店頭での接客時間は限りなく少なくする。採寸はやはり人間がすべきだろう。しかし、デジタル世界ではこれまで以上の関係性を構築して、来店前から来店後までのコミュニケーションをしっかりとする。

これを応用したメガネ屋さんもできるのではないだろうか。
今のメガネ屋さんはJINSなどの低価格業態と百貨店などの中高級店に二分化されている。しかし、その中間価格帯といいのはマーケットがないのだろうか。私は、やはり最終的な調整はメガネを必要だし、しっかりとした技術、サービスが販売員には求められると考える。しかし、今の価格はJINSなどに比べるとあまりにもかけ離れている。ではどうするのか。パーツごとにメガネを分解し、車のタイヤ交換のようにレンズを入れ替える。もしくはフレームだけを入れ替える。というようなカスタマイズとパーソナライズを合わせた提案ができないだろうか。
メガネのレンズはフレームごとに形を合わせないといけない。だから一度作ったレンズを他のフレームに入れ替えるのは難しいし、もともとそういう考えはなかったのではないか。しかし、冬のスノータイヤのように、冬にはどっしりとした重厚感のあるフレームを、そして夏には爽快感のある軽いフレームに付け替えられるような提案はあるのではないだろうか。私も夏には軽いチタン枠をかけたいし、冬はセルロイドのずっしりしたフレームをつけたい。

メガネをパーツにして、一番値段の高い、レンズ、フレームをもモジュール化することによって、新たなパーソナル提案ができそうな気がする。それはJINSのような使い捨て感覚ではなく、良いものを長く着回す着物感覚でできないであろうか。メガネというのはもともと、カスタマイズ化して買うものだ。しかし、その応用が効かない。JINSのように一人で用途に合わせて10本もメガネを持つのも良いが、やはり安かろう、悪かろうはつきまとう。

パーソナル化はこれまでも小売業では固定客作りにおける重要なものと位置付けられてきた。しかし、やってきたことはサンキューレターを出すための住所を集めてきたに過ぎない。それを今はカード開拓が担っている。しかし、パーソナル化は商品、サービスと一体化してこそ効果が出るのではないだろうか。

AIによる顧客情報の分析によるライフスタイル提案は良いのだが、その前にやることが小売業にはまだまだ多くあるような気がする。