スマートフォンが変える私たちの買い物。しかし大事なのはそれを使う意味は何かをお客様に問うこと!
今日は第2の原則、「シームレスであれ」のパートについて話そう。
でもこの本を読んでいない人からすると、だいたい第2の原則って何?ってことになりそうだし、今日から初めて、このブログを読む皆さんもいるかもしれないので、今やってることを簡単に説明する。
昨年末に出版された、コトラー(マーケティングの有名な先生)のリテール4.0(これからの小売業は新しい時代、特にデジタルがベースとなる社会でどう変わらないといけないのかを説いている本)の中身を私なりに分析し、自分の経験を入れながら解説している。で、その本には小売業が守るべき大切な10の原則があり、今回は2つ目の原則ということだ。
前回は「不可視であれ」で今回が「シームレスであれ」。どちらもあまりピンとこないというか、ワクワクもドキドキもしない興味を引かないタイトルだ。だから読者も読む気がしない。これが消費者である。著者には申し訳ないが。
コトラーなんて私にとっては神様のような存在だが、他の人にしたら、マーケティング実務者の一人に過ぎない。今ならもっと若いデジタルマーケティングの有名な人がいるのだ。
だから、読んでもらうためには、こういうタイトルは大事なんだ。最初のアテンションが大事。それは歌でもドラマでも一緒だ。これが永遠に変わらない消費者心理であろう。
さて、本題に入るが、この本でも強調されているが、スマートフォンは私たちの生活を大きく変えた。私も自分がスマホ中毒ではないかと思うぐらいに毎日頻繁にチェックしている。それは仕事からプライベートまでありとあらゆる場面で使っている。そして買い物もアマゾン、楽天などを含めて24時間買い物ができる環境になっている。TVを見て、フェイスブックを見て友人がおすすめしてる商品をすぐにチェックして、他の評価を見て、それですぐにいくつかのサイトを比べて簡単に購買できるようになった。
先日もシンガポールの友人が絶対におすすめというコメントに触発されて、カナダ産メープルバターを購入したが、いまいちであった(悲)
一番大事なのは、オンラインで消費者は常に小売業者やブランドと繋がることができるようになったことだ。連絡もできる、情報も取れるようになった。顧客からするとお店と繋がっているということが当たり前になったのだ。そうお客様は思っているのだ。だから小売業も自分とは繋がっているのは当たり前だろうと思っている。ここが大事なところだ。
しかし実際には繋がっていない小売業者、ブランドはたくさんある。オンラインでは繋がっているが、リアル店舗とは違う部門のため、販売している商品もネットと店舗では違うといったところがあり、店舗の商品情報はネットでは分からないといったことが消費者のストレスを高めるのである。
特に広範囲の商品を扱っているところや、自ら仕入れをしていない百貨店やショッピングセンターなどでは完全なオムニチャネル化は実現できない。そもそも、百貨店には店舗で販売している商品全てのデータベースがないのである。ラグジュアリーブランドは在庫情報を百貨店と共有することはしない。また食品売場で店内厨房で作った出来立てのお弁当には在庫はデジタルで把握しずらいし、そもそもコストをかけてまでする必要性を小売業者は求めていない。このように、アマゾンのような全ての商品を把握できる状態からビジネスをスタートさせている会社と歴史があり、色々な小売業者が入り組んで出来上がっている小売業者では環境は全く違う。
しかし、消費者はそれを求めるのだ。なぜなら、そういうことは顧客には関係のないことだからだ。しかもそれも知らされていない。出来ない方がおかしいと思い込んでいる。そこに問題がある。
では、どうすれば良いのか。きちんと消費者に説明することではないかと私は思う。
オムニチャネルの出来ない百貨店、ショッピングセンターは出来ない理由とその代わりこういうことをしたいということを顧客にフラットな関係で説明すれば良いのではないかと。
昔、電車が突然止まったりしても、その理由も言わず、また動き出すことで大きなクレームとなった。しかし、今はアクシデントが起きた時にはすぐに説明をしながら状況報告をするので安心できる。お医者さんもそうだ。昔はインフォームドコンセントなどはなく、偉そうな先生に見てもらい、言われた通りの薬をただ飲むというのが当たり前であった。
小売業は色々な業種や業態がある。この本で言われている、これからの小売業は基本、シームレスであるべきだ。でもそれが出来ないのであれば、出来ないことをきちんと顧客に説明する。そしてそれを24時間対話することが必要なのではないか。それが「シームレスであれ」の意味だ。
百貨店などは私もそうだったが、「お客様は神様であり、口答えしてはいけない」と教えられてきた。しかし、今必要なのは、今の百貨店でできること、出来ないこと、でもこうしたいと考えているということを丁寧に顧客に説明し、そのご意見を真摯にしっかりと聞くことではないのだろうか。
例えば百貨店には外商という部隊がある。それこそ、アナログの塊のような御用聞き部隊である。そのお客様は60歳以上が大半を占める。しかし、常にいかにデジタル化を進めるかが議論されて、現場の声は無視されることが多い。お客様もシニア、外商部員もシニアであれば、それに合わせたアナログを支援するデジタル化で良いのではないか。
シニアでもスマートフォンは使う。ビデオチャットはとても人気だ。ではそれを使って顧客と対話し、販売する方法はある。それをどうデジタル化していくのかを考えるべきだ。常にアマゾン、ウオルマートを見て、これが未来の小売業であり、こうなければいけないという人に外商改革は出来ない。
どんな小売業でもまずはスマートフォンをベースにしたビジネスとして何が自分のビジネスとしてできるのかを問うべきであろう。
シームレスに繋がるにはアナログでも良いのである。消費者は絶対にデジタル化して欲しいとは言っていない。ただ、一つ、自分のストレスを減らして欲しいのである。
もっと柔軟に考えていかないと。
たかが、小売、されど、小売!