シリーズ#10 コトラーのリテール4.0を斬る

カスタマイゼーションとパーソナライゼーションの違い

今日は第5原則「パーソナルであれ」について考える。
コトラーは言う。小売業者はこれまでのOne to Manyであるマスマーケットのアプローチから、可能な限りパーソナライズされたソリューションの提案、One to One への戦略変更を求められていると。

またこれまでカスタマイゼーションとパーソナライズゼーションは同じように扱われてきたが、実は本質的な違いがあると。カスタマイズと言うのは一定の範囲の中から、顧客が選ぶことができ、自分にあった製品、サービスを受けることだ。つまり、スーツでいえば、イージーオーダーのスーツである。一定の範囲で好きな生地を選び、好きなシルエットを選び、ボタンも好きなのが選べる。そして、自分のサイズに一番近い体型のパターンを修正するのが、カスタマイゼーションだ。
一方でパーソナライゼーションは消費者に関する情報(過去の購買実績、好みのスタイルなどの分析)の活用によって行われる。期待を先回りして、高い確率で満足が得られるソリューションの提案を行うのである。
いわば、フルオーダーのスーツの注文である。顧客の持つイメージを元に、生地、スタイル、装飾品などをトータルで提案することがパーソナライゼーションである。

したがって、カスタマイゼーションは消費者の選択に対するリアクション的な行動であり、パーソナライゼーションは消費者に感動と喜びを与えるためのプロアクティブ的な行動である。

本書ではカスタマイゼーションの例としてNIKEのシューズのカスタムサービスの話が出ている。車でも今はホームページで好きなボディカラー、オプション装備品、シートの形状など色々なカスタム化が可能になっている。
商品のカスタム化だけでなく、サービスでも美容室では、カット、パーマと言ったこれまでのものから、ネイル、ヘッドスパなどこれまでのヘアーカットサービスが癒しのサービスへと変わってきている。これもカスタマイゼーションの一つであろう。ではこれからのパーソナライゼーションとは何か。
本書ではデジタル技術をベースにしたパーソナル化を提言している。つまり、顧客にはあくまでも人間がアプローチしているかのように見せかけながらも。個人のデータを集め、それを分析し、一人一人の個性に合わせた提案をすることが求められているのだと。
そして、その提案は顧客のスマホに向けて、店外から店内にいる時でも常に顧客とインタラクティブにコミュニケーションしながら作り上げて行くものだと。つまり顧客とのコミュニティ作りによる、新たな価値創造を商品だけでなく、店内での体験を含めて総合的に行っていくと言うことである。
しかし、これは言うは易く行うは難しである。
本書ではセフォラやNIKE by メルローズの例を取り上げているが、私にはあまりピンと来なかった。

私が考えるパーソナル化とは、先ほどのオーダースーツの例でいうと、これまで最低でも15万近くはしていた、フルオーダーのスーツをイージーオーダー並の10万円以下、79000円でできるような仕組みをデジタルを使ってできるようにすることではないかと。しかも、スマホの中にはもっと色々なオプションが用意されているのだ。
これまでは熟練の販売員と技術者がいて初めて成立した、フルオーダーをデジタル化し、情報の分析もAIでこなすことで、店頭での接客時間は限りなく少なくする。採寸はやはり人間がすべきだろう。しかし、デジタル世界ではこれまで以上の関係性を構築して、来店前から来店後までのコミュニケーションをしっかりとする。

これを応用したメガネ屋さんもできるのではないだろうか。
今のメガネ屋さんはJINSなどの低価格業態と百貨店などの中高級店に二分化されている。しかし、その中間価格帯といいのはマーケットがないのだろうか。私は、やはり最終的な調整はメガネを必要だし、しっかりとした技術、サービスが販売員には求められると考える。しかし、今の価格はJINSなどに比べるとあまりにもかけ離れている。ではどうするのか。パーツごとにメガネを分解し、車のタイヤ交換のようにレンズを入れ替える。もしくはフレームだけを入れ替える。というようなカスタマイズとパーソナライズを合わせた提案ができないだろうか。
メガネのレンズはフレームごとに形を合わせないといけない。だから一度作ったレンズを他のフレームに入れ替えるのは難しいし、もともとそういう考えはなかったのではないか。しかし、冬のスノータイヤのように、冬にはどっしりとした重厚感のあるフレームを、そして夏には爽快感のある軽いフレームに付け替えられるような提案はあるのではないだろうか。私も夏には軽いチタン枠をかけたいし、冬はセルロイドのずっしりしたフレームをつけたい。

メガネをパーツにして、一番値段の高い、レンズ、フレームをもモジュール化することによって、新たなパーソナル提案ができそうな気がする。それはJINSのような使い捨て感覚ではなく、良いものを長く着回す着物感覚でできないであろうか。メガネというのはもともと、カスタマイズ化して買うものだ。しかし、その応用が効かない。JINSのように一人で用途に合わせて10本もメガネを持つのも良いが、やはり安かろう、悪かろうはつきまとう。

パーソナル化はこれまでも小売業では固定客作りにおける重要なものと位置付けられてきた。しかし、やってきたことはサンキューレターを出すための住所を集めてきたに過ぎない。それを今はカード開拓が担っている。しかし、パーソナル化は商品、サービスと一体化してこそ効果が出るのではないだろうか。

AIによる顧客情報の分析によるライフスタイル提案は良いのだが、その前にやることが小売業にはまだまだ多くあるような気がする。

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